こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。
ついに消費税が10%になってしまいましたねー
ワインは軽減税率の対象外なので、買いだめした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一方で、ワイン好きにとって朗報もあります。
10月7日(日本時間10月8日未明)、米・ホワイトハウスで日米両政府が日米貿易協定に正式に署名しました。この後は臨時国会での承認を経て、2020年1月1日の発効を目指すとのこと。
協定が発効すると、米国産ワインの輸入関税が引き下げられ、販売価格も下がります。
アメリカのワインといえば、ナパワインを筆頭に日本でも人気です。
今回は、日米貿易協定の合意内容や最新のワインの輸入関税率を抑えつつ、
- 米国産ワインはどのくらい安くなるのか?
- 日本ワインには何か影響があるのか?
を確認してみたいと思います。
※2020.2.27追記:日米貿易協定は、2020年1月1日に発効しました。
はじめに:ワインの輸入関税について
日本におけるワインの輸入関税は、WTOルールで「1リットル125円か輸入価格の15%のうち安いほう」とされています。750mlのボトル1本に換算すると、最大93円が関税として販売価格に上乗せされます。
ただし、EPAなどの貿易協定を結んでいる国や地域間では、協定の内容次第で関税率が引き下げられます。
下の表は、ワインの輸入関税率が引き下げられている国・地域の最新の税率です。
相手国 | 関税率 |
---|---|
メキシコ、チリ、スイス、ペルー、EU | 無税 |
オーストラリア | 3.8% |
モンゴル | 9.5%又は79.55円/lのうちいずれか低い税率 |
TPP11 | 8.5%又は125円/lのうちいずれか低い税率 |
ヨーロッパ、チリ、オーストラリアといった世界の名だたる銘醸国のワインが、すでに関税引き下げによって値下げされています。
*1 財務省 実効関税率表(2019年4月1日版)HSコード「2204.21.020」の関税率を参照。
日米貿易協定の酒類に関する合意概要
日米貿易協定はどんな内容で最終合意したのでしょうか?
内閣官房ホームページで公開されていた概要資料を引用します。
酒類
日米貿易協定、日米デジタル貿易協定の概要|内閣官房ホームページ
〇ワインについての関税撤廃は、TPPと同内容。他の酒類(清酒、焼酎等)は譲許せず。
〇米国は、米国におけるワイン・蒸留酒の容量規制の改正に向けた手続、日本産酒類の10表示(国税庁長官が指定した地理的表示)の保護に向けた検討手続、酒類のラベルの承認のための手続の簡素化、米国市場における日本の焼酎の取扱いのレビューを約束。
以下、簡単に解説します。
ワインの輸入関税はTPPと同じ水準で引き下げ
まず1つめの項目について。
日米貿易協定では、農産品の輸入関税をTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の範囲内に収めることで合意しています。米国は過去にTPPから離脱していますので、日本としてはTPP以上の譲歩はできないということでしょう。
TPP11ではワインの輸入関税を段階的に引き下げ、2025年に撤廃します。報道によれば、米国産ワインの関税撤廃も同時期になるよう調整するそうです。*2
現時点で、TPP11の関税率は8.5%。日米貿易協定の発効後、米国産ワインの関税率も一気にこの水準まで引き下げられる可能性があります。
具体的な税額の例は後ほど。
*2 日本経済新聞 2019年9月15日朝刊より
日本ワインが米国に輸出しやすくなる?
2つめの項目は、米国側が譲歩する内容です。
- ワイン・蒸留酒の容量規制の改正に向けた手続
- 日本産酒類の10表示(国税庁長官が指定した地理的表示)の保護に向けた検討手続
- 酒類のラベルの承認のための手続の簡素化
- 米国市場における日本の焼酎の取扱いのレビュー
要するに、日本産のお酒を米国に輸出しやすくなるように制度を見直してもらうわけです。
が、「約束」とあるので、具体的なことはこれから検討するんでしょうかね。
日本産酒類の10表示(国税庁長官が指定した地理的表示)とは?
地理的表示は、ごく簡単に言うとブランド産地の表示を保護する仕組みです。有名なところでは、ボルドー、神戸ビーフなども地理的表示です。商品のラベルなどに表示するには一定の基準を満たす必要があり、不正利用には罰則もあります。
日本産酒類の10表示とは、現在日本でお酒の地理的表示として指定されている下表の10件のことです。
酒類区分 | 地理的表示の名称(認定順) |
---|---|
清酒 | 白山、日本酒、山形、灘五郷 |
蒸留酒 | 壱岐、球磨、琉球、薩摩 |
ぶどう酒(ワイン) | 山梨、北海道 |
これらが米国でも保護されるようになれば、米国における日本産酒類のブランド価値が高まり、輸出促進効果が期待できます。
ちなみに日欧EPAでは、日本とEUの地理的表示は相互に保護されています。
米国産ワインはどのくらい安くなる?
では、日米貿易協定の発効後、米国産ワインがどのくらい安くなるのかを予想してみましょう。
米国産ワインの平均輸入価格(2018年時点)は1リットル当たり864円なので、これを基準に計算します。*3 なお、実際の関税の計算はもっと複雑ですが、この記事では単純化しています。
現在の関税は?
繰り返しになりますが、ワインの輸入関税は、1リットル125円か輸入価格の15%のうち安いほう。864円×15%=約129円なので、より安い125円が適用されます。
TPP11と同水準=8.5%の場合
発効後、TPP11と同じ8.5%に引き下げられた場合、864円 × 8.5%=73.44円なので、この金額が適用されます。単純化するために小数点以下を切り捨てて、73円とします。
これをボトル1本(750ml)に換算すると、
- 現在:(864円+125円)× 0.75L = 約741円
- 関税引き下げ後:(864円+73円)× 0.75L = 約702円
米国産ワイン1本で、平均約40円の値下げということになります。
*3 日本経済新聞 2019年9月15日朝刊より
日本ワインに何か影響はあるのか?
国内で日本ワインが売れなくなる?
ワインに限ったことではありませんが、関税の引き下げで海外から安い競合品が入ってくることは、国内の生産者にとって脅威です。
よって、米国産ワインが今より安くなると、日本ワインの販売にマイナスの影響が出るのではないか?という考え方もできます。
しかし、過去記事でも書いていますが、関税撤廃で輸入ワインが数十円程度安くなったところで、単価が高めの日本ワイン市場に大きな影響はないと考えています。
輸入ワインが安くなることでワインを楽しむ人が増え、ワイン市場全体が拡大するなら、日本ワインの市場にとってむしろプラスに働くかもしれません。
日本ワインの輸出は拡大するのか?
これもどうでしょうかねー。。
数量規制の緩和などが進むと、日本酒や焼酎の輸出は増えるかもしれません。
ワインはというと、輸出環境が整ったところで、国内生産量が少ないのでそう単純に輸出拡大とはならないでしょう。
日本ワインの輸出については次回の記事で書く予定なので、この辺にしておきます。
まとめ
いかがでしたか?
米国産ワインが値下がりすることでワインを楽しむ文化がより浸透し、日本ワインもさらに盛り上がることを期待したいと思います。
ワインの輸入関税やEPAについては他にも記事を書いていますので、興味のある方はこちらからどうぞ。
ではではー
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