日欧EPAが日本ワインにもたらす影響って?

こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。

今回のテーマは、日欧EPAです。

EU産のワインやチーズが安くなるということでマスコミでもしばしば取り上げられますが、実は日本ワインにも少なからず影響があります。

どんな影響があるのか?

そもそも日欧EPAって何??という方もいらっしゃると思うので、なるべくシンプルに解説してみたいと思います!

日欧EPAって何?

日欧EPAとは、日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(Economic Partnership Agreement)のことです。

経済連携協定とは、貿易に関する規制を取っ払い、自由に貿易をしてお互いハッピーになろう!という取り決めのことです。最近アメリカが離脱してしまったTPPもEPAの一種です

「貿易の自由化」というと聞こえはいいですが、海外の安い製品が無制限に入ってくれば国内産業には打撃です。政府は自国の産業を守らなくてはなりませんので、交渉は一筋縄にはいきません。

日本政府とEUの交渉は2013年に始まりましたが、途中で難航し、忘れた頃にまた再開・・・という状況が続いていました。それが今年に入って大きく進展し、ついに年内の最終合意を見込んでいます。その後2019年の発効を目指します。*1

では、日欧EPAが発効すると具体的に何が変わるのでしょうか?

*1 2018.12.28追記:日欧EPAは12月12日(フランス時間)EU本会議で承認されたことにより、2019年2月1日の発効が決定しました。(日本経済新聞 2018.12.13 朝刊)

輸入への影響

私たち消費者に最も身近なところでは、EUから輸入するワイン、チーズ、豚肉、革製品などの関税が引き下げられることで、これらを少し安く買えるようになります。

ワインの関税は即時撤廃

日本における輸入ワインの関税は、1リットル125円輸入価格の15%のうち安いほうとなっています。750mlのボトル1本あたりで、最大93円が関税として販売価格に上乗せされています。

これが協定の発効後に即時撤廃=ゼロになります。

つまり、今は1本1000円のフランスワインが、900円ちょっとで買えるようになるのです!

おトク!!

食品で即時撤廃になるのはワインだけで、EUが重要視し交渉が難航していたチーズは、輸入価格の29.5%という関税を16年かけて段階的にゼロにします。

もとより日本で人気の高いフランスワインイタリアワインが値下がりすれば、消費がさらに喚起され販売量が増加することが予想されます。

といっても、ボルドーの高級ワインが100円値下がりしたところで誰も気にしないと思います。最も販売量の増加が見込めるのは、1000円前後のデイリーワインでしょう。

日本ワインへの影響は?

日欧EPAの日本ワインへの影響がどう見られているのかというと、EUワインの販売量増加による販売減を懸念する声がある一方で、ワイン市場全体が拡大し、日本ワインにも波及するチャンスと捉える意見もあります。

輸出への影響

もちろん、日本からEUへの輸出に関する規制も緩和されます。

日本ワインの輸出に関連するところでは、次のような条項が定められています。

  • 関税の撤廃
  • 地理的表示(GI)の保護
  • 日本ワインの輸入規制(醸造方法、輸出証明)の撤廃

2点目の地理的表示(GI)は、知的財産権のひとつで、一言でいうと独占的に産地を名乗れる権利のことです。日本のGIがEUでも保護されるようになれば、ブランド力の向上につながります。

ただ、現時点では日本のワイン産地でGIが認定されているのは山梨県だけなので、他のワイン産地には恩恵がありません。*2

とはいえ、GIを抜きにしても、国内生産者にとってはEUへ日本ワインを輸出しやすい環境になります。

ヨーロッパにはたくさんのワイン産地があり、現地で美味しいワインを安く買えるので、割高で知名度も低い日本ワインは苦戦します。EPAによる関税撤廃で少しでも現地価格が下がれば、すぐにではなくても、例えば和食ブームとの抱き合わせなどで販路拡大のチャンスがやってくるはずです。

*2 2018.12.17追記:2018年6月28日、地理的表示「北海道」(GI Hokkaido)が新たに指定されました。

で、結局プラスなのか?マイナスなのか?

輸出してEUにアピールしていきたい生産者からすれば、規制緩和によって機会が広がります。

輸出に興味がない生産者からすれば、国内で人気の高いEUワインの価格が下がることは、少なからず脅威です。

実際のところは、発効してからでないとわかりません。

私がどう思うのかというと、日本ワイン産業にはさほど影響がないと考えています。

過去記事でも書きましたが、日本ワインは価格で勝負していません。

EUワインの消費量が増えるとしたら、そこに最も貢献するのは、安さでワインを選ぶ消費者層です。

日本ワインは安くても1500円〜2000円くらいはするので、日常的に日本ワインを買う消費者が、100円値下がりしたEUワインに流れると思えません。

まとめ

今回は、日欧EPAが日本のワイン産業にもたらす影響について、俯瞰してみました。

輸出面では確かにメリットが大きいですが、現時点で、国内の生産量も決して多くない中で積極的に輸出を拡大したい生産者がどれほどいるのかは疑問です。まずは国内市場の拡大が課題なのではないでしょうか。

長期的にはプラスに働くと願っています!

最後に。

地理的表示についてちょっと書きましたが、来たる12月8日と9日、都内で山梨県の地理的表示「GI Yamanashi」を味わえるイベント・山梨ワイナリーズフェアが開催されます!

去年は直前に前売チケットが売り切れてましたよー

お見逃しなく!!!

ではではー

*「山梨ワイナリーズフェア2017」は、すでに終了しています。

参考リンク

日欧EPA合意要旨: 日本経済新聞

日欧EPAに期待と不安 ワインお得に、木材は輸入増も :日本経済新聞

日欧EPA大枠合意、首相「国内対策を指示」 関税下げに企業期待 | ロイター

輸出支援の取組み|国税庁

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