日本酒と日本ワインを世界進出で比べてみる

こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。

先日、日経新聞で元サッカー日本代表の中田英寿さんに関するコラムが目にとまりました。

スポーツ面ではなく、マーケット面。

記事によると、中田さんは引退後に世界を放浪した結果日本酒に行き着き、現在はかつてのサッカーと同じくらいの情熱を日本酒の世界への普及に注いでいるそうです。

その取り組みの1つが、ワインセラーならぬ「日本酒セラー」の開発。輸出先における温度管理などを懸念して輸出をためらう蔵元がいる現状を踏まえ、現地で日本酒を良い状態で提供してもらうためのアイデアで、さらに和食以外のレストランでも日本酒を提供しやすくするための専用グラスも考案中とのこと。

記事は、こうした彼の活動でセラーやグラスなど周辺製品の業界にも利益がもたらされれば、経済波及効果が大きくなるとし、

生産者だけではなかなか気づかないその魅力を発掘し、そのインフラも整備して世界に紹介する。中田さんのような「仲介者」が増えてくれば、政府のお金に頼らずとも、地方はもっと元気になるのではないだろうか。

日本経済新聞 2017.9.7 朝刊 マーケット面

と締めています。

サケノミクス???

なかなか興味深いです。

日本酒の世界への普及といえば、初回の記事で書いたのですが、政府はクールジャパン推進の一環で日本産酒類の輸出強化に取り組んでいて、もちろん日本酒も日本ワインも対象になっています。

というわけで、今日は日本酒と日本ワインの輸出について俯瞰してみたいと思います。

日本酒とワインの輸出状況

では実際、どのくらい輸出されているのでしょうか?

直近十数年の輸出統計をグラフにしてみました。あまりにも桁違いなので、2軸グラフにしています。

日本酒とワインの輸出数量・輸出金額の推移

ピンク系が日本酒で、ブルー系がワイン

数量、金額ともに、日本酒は右肩上がり、ワインはどちらかといえば右下がりになっているのがわかるかと思います。

ちなみに、ワインが国産ぶどう100%の「日本ワイン」であるかどうかは不明です。

下の表は、2016年の数字だけを抜き出したものです。輸出数量も輸出金額も、ワインは日本酒の1%程度ということになります。

2016年輸出数量(KL)輸出金額(百万円)
日本酒19,73715,581
ワイン207155

・・・ワイン、がんばれ!!!

グラフで1つ面白いのは、日本酒は輸出数量と金額が同じようなペースで増加しているのに比べると、ワインのほうは両者の関係性が掴みにくい点です。特に2010年は、数量が大きく減っている一方で、金額が跳ね上がっています。

少ない数量で金額が大きいということなので、この年は単価の高いワインが多く輸出されたものと考えられます。

「単価の高いワイン」というと前回の記事を読んでいただいた方はお察しかもしれませんが、良質な日本ワインの割合が大きかったのではないかと推測できます。

ちなみに主な輸出先は、日本酒はアメリカ、香港、韓国、台湾など。ワインは台湾、シンガポール、香港などアジアが中心です。

政府は日本酒のPRに特に注力

政府は2013年に、日本産酒類の輸出環境整備に向けた関係府省等の取り組み状況の把握や関係者間の調整を行うために「日本産酒類の輸出促進連絡会議」を設置しました。内閣府のHPで公開している同会議の資料では、日本酒のプロモーションに関する活動が多く確認できます。

例えば、

  • 海外の公館や見本市における日本酒の試飲会・セミナー
  • 酒蔵ツーリズムの推進
  • 日本酒のラベルを読み取り、商品の情報を多言語で発信するアプリの開発

などなど。

確かに上のグラフをみると、日本産酒類の輸出促進連絡会議が設置された2013年以降の日本酒の輸出数量・金額の増加幅はそれまでと比べて大きいように見えますかねー。

ただし、日本酒の輸出の好調ぶりにどれほどこれらの活動が影響しているのかは、もっと調べてみないと何とも言えません。円安など、他の要因もあるかもしれません。

日本ワインはというと、実はあまり資料に登場しません。

しかしながら、国税庁が進めていた日本初のワインの地理的表示「山梨」の認定や「日本ワイン」の表示ルールの制定が実現に至ったのは、国内ワイン産業にとって世界への足がかりとなる重要な一歩です。

次は、これらをいかに国内外の消費者に広めていくかが課題です。

インバウンドにも魅力的なSAKE

日本酒は「米でできたお酒」として外国人には物珍しく、まず興味を惹きますよね。和食ブームや訪日観光客の増加なども、日本酒の世界へのPRにとってプラスの要因です。

日本ワインはその点不利です。

すでに世界中で自国や世界各地のワインが飲まれていますし、日本といえば “SAKE” で、ワインが造られていることすら知らない人が多いのではないかと思います。

ただ裏を返すと、ワインは世界中の人にとって親しみやすい飲み物なので、日本産という付加価値で興味さえ持ってもらえれば、専用セラーやグラスなどの心配をする必要はなく、ワインだけで勝負が可能です。

そうなると、和食ブームや訪日観光客の増加は、日本ワインにもプラス効果をもたらしますね!ただ、観光という面では、残念ですがワイナリー見学よりも酒蔵見学の方が外国人の食いつきは良いのかなと思います。

まとめ:日本酒に完敗か・・・

うーん。

現時点では世界進出において、日本ワインは日本酒に完敗という感じでしょうか。

これだから、私は応援したくなります。

余談ですが、中田英寿さんは山梨県甲府市のご出身。ワインじゃなくて日本酒に行ってしまったんですね。

ではまたー

参考リンク

日本産酒類の輸出促進連絡会議 : 知的財産戦略推進事務局 クールジャパン戦略 – 内閣府

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