インバウンドと日本ワイン1:ビジット・ジャパン・キャンペーン

こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。

今回のテーマは、インバウンド

インバウンド(inbound)には「外から入ってくる」という意味があり、訪日外国人を指す言葉として使われます。

新聞などで報じられていますが、現在日本のインバウンド市場は拡大の一途を辿っていて、新たなビジネスモデルや地域活性化の手段としても注目されています。

そこで、

インバウンドと日本ワインに相互作用はあるのか?

という点について、数回にわたって考えてみたいと思います。

第1回は、インバウンド市場の概況を確認しつつ、政府のインバウンド推進策における日本ワインの扱いについて調べてみます。

インバウンド市場が急拡大

はじめに書いたように、ここ数年で国内のインバウンド市場は急成長しています。

図は過去10年間の訪日客数を目的別に表したものです。

2007年以降の目的別訪日外客数の推移

東日本大震災の発生した2011年に落ち込んだ後、円安やビザ発給要件の緩和を背景にものすごい勢いで増加し、昨年2017年には2800万人を超えました。図でわかるように、増加分のほとんどは観光客です。

宿泊客は都市部に集中するが・・・

次の図は、2017年における外国人延べ宿泊数の都道府県別シェアを表したものです。

2017年外国人延べ宿泊者数のシェア

ビジネス客も多いであろう東京大阪をはじめとして、いわゆる三大都市圏のシェアが高くなっています。わかりやすいように、三大都市圏を赤系、地方圏を青系で塗りました。

まあ、大都市に訪日客が集中することにはあまり違和感がないでしょう。

一方で、先日の日経新聞の記事によれば、地方に滞在する訪日リピーターが増えていて、地方都市でインバウンド対応のホテルの開業が相次いでいるのだそうです。

日本を気に入って再び訪れる人たちが、新たな体験を求めて地方に向かうという感じでしょうか。

* 日本経済新聞 2018年8月8日 朝刊 企業1

政府もインバウンドを推進

政府は今から15年前の2003年にビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)を始動し、国土交通省を中心として海外へ向けた訪日プロモーション活動を行ってきました。東京オリンピックが開催される2020年までに年間訪日客4000万人、消費額8兆円を目標に掲げています。

もっとも、近年のインバウンドの急増にプロモーション活動がどれほど貢献しているのかはわかりませんが、先に書いたビザ緩和はビジット・ジャパンの取組みの1つです。

なぜインバウンドを増やそうとしているのか?

それは、観光産業の経済波及効果が高いからでしょう。

例えば、

  • 観光地の雇用創出による地域活性化
  • インバウンド関連ビジネスの発展による国内企業の成長
  • 人口減少で縮小する国内消費の喚起

などです。

もちろんメリットだけではありませんが、記事の主旨から逸れるので今回はプラス面だけ挙げておきます。

ビジット・ジャパン・キャンペーンにおける日本ワイン

前置きはこの辺にして、ビジット・ジャパン・キャンペーンにおいて日本ワインがどう扱われているのかを見てみましょう。

観光庁:酒蔵ツーリズム®の推進

酒蔵ツーリズムは、酒蔵を巡ってお酒と一緒にその土地の文化や食事も体験しようという旅のスタイルです。ワインツーリズムと同じコンセプトだと思います。

観光庁では2013年に「酒蔵ツーリズム推進協議会」を発足し、酒蔵ツーリズムの振興を図っています。「酒蔵」という時点でワインは眼中になさそうですが、協議会の規約に次のような条項がありました。

第2条 本協議会は、酒蔵ツーリズムの振興を通じて、日本産酒類(日本酒、焼酎、泡盛及び 日本産ワイン・ビール等)を盛り立てるとともに、それを観光資源として活用し、外国人観光客への訴求も見据え、我が国及び地域の魅力の発信と地域活性化につなげる。

観光庁ホームページ

なんと!

日本ワインも対象になっているんですねー。

ただし、サイト上の資料を見る限り、あくまでも中心は日本酒焼酎。ワインやビールはついでに出てくる程度です。

そりゃあ、日本といえば “SAKE” ですよね・・・

国税庁:外国語版の酒蔵マップを作成

こちらは特にビジット・ジャパン事業を謳っているものではありませんが、さすが酒類業の所轄官庁とあって、各地の国税局が管内の外国語版酒蔵マップ公開しています。

またも酒蔵か・・・。

と嫌な予感がしつつも調べてみたところ、全国11の国税局のうち5カ所で、ワイナリーが掲載された外国語版酒蔵マップを公開していました。

国税局管轄地域対応言語リンク
仙台国税局青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島英語 
関東信越国税局茨城・栃木・群馬・埼玉・新潟・長野英語 
高松国税局徳島・香川・愛媛・高知英語・中国語・韓国語 
福岡国税局福岡・佐賀・長崎英語・中国語・韓国語 
熊本国税局熊本・大分・宮崎・鹿児島英語・中国語 

中でも注目に値するのは、コチラの関東信越国税局の英語版酒蔵マップ。

関東信越国税局の英語版酒蔵マップ

日本酒と日本酒以外のお酒でそれぞれマップが用意されています。画像は日本酒以外のお酒バージョンです。

各施設の見学有無英語対応免税対応などがアイコンでわかるようになっていて、なかなかのクオリティーです。

訪日観光客は日本でワイナリーに行くのか?

正直なところ、よっぽどのワイン好きでもない限り、日本に観光に来てあえてワイナリーを訪れないと思います。

実際どうなのか?という点は次回以降の記事で書くとして、ワイン愛好家以外で可能性があるとすれば、前述の日経新聞の記事にあった地方に滞在する訪日リピーターではないでしょうか。何度か日本を訪れて、近くにワイナリーがあるなら行ってみようかなという人はいるはずです。

もちろん、そうなるためには、インバウンド客にとってアクセスしやすく魅力的な情報発信が不可欠です。

まとめ

インバウンドと日本ワインに相互作用はあるのか?について考えるシリーズ1回目。

今回のポイントは次の3点です。

  • 訪日リピーター客が地方に増えている
  • ビジット・ジャパン・キャンペーンにワインはほとんど登場しない
  • 国税局の外国語版酒蔵マップがすごい

初回ということもあり、インバウンド全般に関する情報が多くなってしまいましたが、次回以降はもう少しワインにフォーカスしていきたいと思います。

のほほんと調査中ですので、気長にお待ちいただけますと幸いです m(_ _)m

ではまたー

*「酒蔵ツーリズム」は、佐賀県鹿島市の登録商標です。

参考リンク

統計データ(訪日外国人・出国日本人)|統計・データ|日本政府観光局(JNTO)

統計情報 | 統計情報・白書 | 観光庁

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