こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。
昨年(2020年)11月、北海道のぶどう品種「山幸(Yamasachi)」がOIV(国際ブドウ・ワイン機構)の品種リストに登録されました。
日本固有品種としては、甲州、マスカット・ベーリーAに続く3例目。
なんとめでたい!
ところで皆さん、山幸っていうぶどう、ご存知ですか?
「やまさち」と読みます。
馴染みのない方が多いのではないでしょうか。
筆者は日本ワイン検定で勉強したのでギリギリ知っていましたが、飲んだことはありませんでした。
というわけで今回は、山幸がどんなぶどうなのか、またOIVに登録されるとどんなメリットがあるのか、などについて書いてみたいと思います。
北海道・池田町で開発された独自品種
山幸は、池田町ブドウ・ブドウ酒研究所によって開発されたぶどう品種です。
池田町ブドウ・ブドウ酒研究所は、北海道南東部・十勝平野の池田町にあるワイナリーです。1963(昭和38)年創業で、道内で現存する中では最も歴史の長いワイナリーになります。「十勝ワイン」のブランド名のほうが知られているかもしれません。
当時財政難にあった池田町の町おこしとしてブドウ栽培が始められましたが、十勝地方は積雪量が少なく、冬季に土が凍ってブドウが枯死してしまうという課題がありました。そのため、耐寒性に優れた品種の研究が重ねられました。
その中で生まれたのが、山幸です。
山幸の特徴は?
以下、池田ブドウ・ブドウ酒研究所のホームページのからの引用です。
山幸は1978年に開発に着手、フレンチハイブリットのセイベル13053を(耐寒性や収量性を目的に)クローン選抜した品種の「清見」に在来種である「山ブドウ」を掛け合わせたブドウの中から更に選抜した醸造用赤品種です。耐寒性・耐凍性に優れ、冬期間の枯死防止のために対策を講じる必要がなく、栽培農家の労力を軽減できる有望な品種です。
池田町ブドウ・ブドウ酒研究所ホームページ(https://www.tokachi-wine.com/topics/7753.html)
要するに、
- 清見とヤマブドウの交配種
- 赤ワイン用の品種
- 耐寒性・耐凍性に優れている
これらが主な特徴と言えます。
「清見(きよみ)」も池田ブドウ・ブドウ酒研究所が開発した品種です。耐寒性に優れますが、冬季の枯死対策(=盛土)は依然として必要で、かなりの手間が掛かります。山幸はこの点が解消されています。
なお、清見とヤマブドウの交配種として開発された品種には、「清舞(きよまい)」もあります。次のような違いがあります。
- 山幸 ・・・ 色、渋みが濃い
- 清舞 ・・・ 色は薄く、酸味が強め
池田町以外での栽培拡大にも期待
山幸は池田町の独自品種ですが、プレス発表によると、同じ道東の弟子屈町、鶴居村でも栽培されており、池田町ワイン・ブドウ研究所は栽培に関するアドバイスを行っています。今回のOIV登録を機に、地元栽培農家の山幸への関心が高まることも期待されるとのことでした。
OIVの品種リストとは?
OIV(Organisation Internationale de la vigne et du vin: 国際ブドウ・ワイン機構)は、フランス・パリに本部を置く、ぶどう栽培やワイン生産に関する国際的な研究機関です。
この記事で言う「品種リスト」は、正式には「国際ブドウ品種及び同義語リスト(International List of Vine Varieties and their Synonyms)」というものです。
日本では酒類総合研究所がOIVへの品種登録申請業務を行います。冒頭にも書きましたが、日本固有品種としては、2010年に甲州、2013年にマスカット・ベーリーAが登録されています。
品種リストに登録されることの意義
結論から言うと、海外市場(特にEU)の開拓において大きな意義があります。
具体的には、EUへ輸出・販売するワインのラベルに原料の品種名を表示することができるようになります。今まではラベルに「山幸/Yamasachi」と表示することができなかったのです。
品種名が表示されたワインと表示のないワインでは、商品価値がまったく異なってきます。皆さんもラベルに記載された品種名を頼りにワインを選ぶことが多いのではないでしょうか。
加えて、北海道は地理的表示(GI)にも登録されているため、EU向けワインのラベルに「北海道」と表示することも可能です。
国内市場においても、山幸の知名度が向上すれば、北海道のワイン産業全体や観光業等関連産業への波及効果も期待できます。国内外でいかに効果的なプロモーションを行い、知名度を向上できるかがポイントになりそうです。
ちなみにプレス発表によると、EU市場の開拓はこれからになるそうです。
山幸のワインを飲んでみた
ネットで山幸を購入してみました!ヴィンテージは2017年、価格は税込2872円です。普段飲みにはちょっと贅沢な価格帯かもしれませんね・・。
ヤマブドウの交配種ということで、酸味や渋みが強そうなイメージがありましたが、飲んでみると酸味、渋みともに穏やかで、口あたりがよく上品なワインという印象を持ちました。
一方でヤマブドウらしい野生っぽさというか、パンチもあって、味の濃い料理にも負けない、バランスの取れたワインだと思います。香りについて、ラベルでは「花」と表現されていましたが、私は茎っぽさを感じました。※個人の感想です。
ハンバーグとローストポテト、カブと一緒に、美味しくいただきました♪
まとめ
OIVに登録された池田町の独自品種「山幸」について書いてみました。
今後、EUへの販路拡大だけでなく、国内における知名度向上にも期待したいと思います。
この記事が少しでもお役に立てば嬉しいです。
ネットで購入できますのでぜひ飲んでみてください!
最後に、池田町ブドウ・ブドウ酒研究所のプレス発表動画を共有します。池田町におけるブドウ栽培や山幸の特徴、今後の展望などについて詳しく説明されていますので、興味のある方はどうぞ。
ではまたー
参考リンク
参考文献
山本 博 著『新・日本のワイン』早川書房
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