こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。
日本国内におけるワインブームは、1972年の第1次に始まり、2012年の第7次までの7回あったというのが通説です。
今回は、これらのワインブームを時代背景とともにサマリーし、7回のブームの意味について考えてみたいと思います。
日本のワインブームをサマリー
図は、1970年度以降の国内のワイン出荷量と消費量を表したものです。ワイングラスのマークのところは、ワインブームが起こった時期です(ブームが複数年にわたる場合は開始時期)。
棒グラフは出荷量を表し、そのうちグリーンが輸入ワイン、ピンクが国産ワインです。折れ線は消費量です。
70〜80年代のデータが一部見つからなかったのでところどころ抜けていますが、全体的に上昇傾向で、ワインブームの起こった時期に特に大きく伸びている様子がわかるかと思います。
以下、7回のブームを時系列で見てみましょう。
第1次(1972年):ヨーロッパの食文化が浸透
1964年の東京オリンピック、1970年の大阪万博を経てヨーロッパの食文化が一般に広まり、外国産ワインの輸入が自由化されたことで日本初のワインブームが起こりました。
サントリーの「金曜日はワインを買う日」や、マンズワインの「夫婦でワイン」のテレビCMも、一般家庭へのワイン普及の追い風になったようです。
第2次(1978年):1000円ワインブーム
サントリーレゼルブに代表される1000円ワインが売り出され、その手軽さで人気を博しました。
ちなみに、1978年の酒類の物価指数は2015年を100とすると73なので、当時の1000円ワインは今でいうと100÷73×1000 ≒ 1400円くらいの価値だったと考えられます。
*総務省統計局「2015年基準 消費者物価指数 全国」
第3次(1981年):地ワインブーム
地ワイン、中でも低価格で大容量の一升瓶ワインがブームになりました。
なお、第2次、第3次ブームの起こった70年代後半から80年代前半は、高度経済成長期が終わり、人々の関心が大量消費に象徴される物質的な豊かさから心の豊かさに移っていった時期です。
第4次(1987-1990年):高級ワインブーム
バブル全盛期です。
ボージョレ・ヌーボーが席巻し、外国産の高級ワインに人気が集まりました。1985年のプラザ合意によって円高が進み、輸入ワインの価格が下がったことも影響したと考えられます。
グラフで見て取れるように、輸入ワインの出荷量がこの時期大きく伸びました。
第5次(1994年):500円ワインブーム
バブルが崩壊し、消費スタイルが高級志向から節約志向にシフトしたことで、500円前後のワンコインワインが人気となりました。
この頃発売開始したのが、メルシャンの「ボンマルシェ」やサントリーの「デリカメゾン」です。
第6次(1997-1998年):赤ワインブーム
赤ワインに含まれるポリフェノールが心臓疾患の予防になるという学説が広まり、赤ワインブームが起こりました。
この2年間の出荷量・消費量が突出しているのは、グラフではっきりとわかります。特に1998年は消費量が30万キロリットルに迫り、ブーム前の約2倍になりました。また、国産ワインの出荷量はこの年がピークで、今だに更新されていません。
おそるべし、健康ブーム・・・。
このあと出荷量・消費量ともに反動で減少し、2000年代は20万キロリットル台半ばを推移します。
第7次(2012年〜?):同時多発的ブーム??
14年ぶりのワインブーム。
これ!といえる唯一の要因はなく、
- チリ産などの低価格輸入ワインブーム
- 日本ワインブーム
- スパークリングワインブーム
- バルブーム
など、同時多発的にブームが起こっています。
ワインがすっかり私たちの日常に溶け込み、楽しみ方も多様化しているということでしょう。
経済的な背景としては、アベノミクスによる景気回復や、付加価値に対価を支払うプレミアム消費の広がりなど、消費者マインドにプラスの変化が生じています。
また、チリワインのブームは、2007年に発効したチリとのEPA(経済連携協定)による関税引き下げが影響しています。
ただし、グラフを見ると2010年くらいから出荷量・消費量が増えているので、なぜ2012年からブームと言われているのかよくわかりません。
そして、いつ終わったのかもわかりません・・・
まだ続いてるんですかね??
7回のワインブームが起こった意味とは?
「ブーム」を広辞苑で引いたところ、
”ある物事がにわかに盛んになること。”
とありました。
ワインはこの50年間、これを7回繰り返したことになります。
注目したいのは、ブームが去った後も、出荷量や消費量がブーム前より高い水準を維持している点です。
下の図は、1つめのグラフから消費量だけを抜き出したものです。ブーム前年の消費量(オレンジのグラフ)がブーム後の消費量(ブルーのグラフ)の中にきれいに収まっていて、ブーム後に消費量が底上げされていることがわかるかと思います。
ブームが去ると忘れ去られてしまう物事はたくさんありますが、ワインの場合そのようなことがなく、ブームのたびに着実に市場を拡大しています。
ブームが起こるには何らかの起爆剤が必要ですので、ワインの世界はそれだけ新しいアイデアや話題性に富んでいるという見方もできます。
参考:ワイン以外の嗜好品のブームは?
「7回」が他と比べて多いのかどうかを知りたくて、ワイン以外のお酒や嗜好品のブームの回数を調べたので、紹介しておきます。
品目 | ブームの回数 |
---|---|
コーヒー | 第3次まで(第4次がきているという説も) |
ウイスキー | 第5次まで |
焼酎 | 第3次まで |
クラフトビール | 第3次まで |
日本酒やビールは、「吟醸酒ブーム」、「ドライブーム」などお酒のタイプで括られるものが中心で、「第○次」と定義している例が見当たらなかったため除外しました。
「第○次」と謳っている中では、ワインの7回は多いようです。
まとめ
7回のブームを経て、私たちのライフスタイルに浸透してきたワイン。
次はどんなきっかけでブームがやってくるのでしょうか?
そもそも、第7次ブームが終わったのかどうかも不明ですが・・・。
ではではー
参考リンク
参考文献
山本 博 著『新・日本のワイン』早川書房
Comment
コメント失礼いたします。
日本のワインの歴史を知りたいと思いネットで探していたところこのブログを見つけました。それぞれの年にワインブームがどのような社会背景で起こっているのか分かりやすくとてもためになりました!
1つ質問なのですが、このワインブームと社会背景との関係性はご自身で調べたことでしょうか?参考文献等があれば自分も確認したいと思っておりました。
お忙しいとは思いますがよろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます!
第6次までの社会背景は、主にメルシャンのワイン参考資料2018と山本博さんの「新・日本のワイン」を参考にまとめました。
記事に参考資料の記載が漏れていたため、追記しました。大変失礼いたしました。
第7次ブームについては、私自身もワインを楽しむ年齢になっていたので、当時の社会情勢などからの推測も加えています。
また読んでいただけたら幸いです。よろしくお願いいたします!