こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。
3月21日春分の日に品川で開催された、地理的表示「山梨」ワインシンポジウム2019に行ってきました。
地理的表示の最新動向を確認してきたので、ざっとレポートしたいと思います!
はじめに:地理的表示とは?
地理的表示(GI: Geographical Indications)は、ある産品の特性が産地に帰する場合に、その産地を知的財産として登録・保護する制度です。世界貿易機関(WTO)のTRIPS協定で定義され、加盟各国で制定されています。
ワインのGIで有名なのは、シャンパーニュやボルドーなど。
日本国内におけるワインの地理的表示は、現時点で山梨(GI Yamanashi)と、昨年登録されたばかりの北海道(GI Hokkaido)の2つです。後ほど写真で紹介しますが、審査を通過したワインのラベルには「GI ●●」と表示されます。
2月1日に発効した日欧EPAによって、日本とEUの地理的表示が相互保護されることになり、日本のGIワインのブランド力が国内外で高まっていくことが期待されます。
しかし、まだまだ一般消費者の認知度が高いと言えないのが現状です。
地理的表示「山梨」ワインシンポジウムとは?
東京国税局の主催で毎年開催されている、ワインの地理的表示「山梨」のプロモーションイベントです。
シンポジウムというだけあって、有識者による講演やパネルディスカッションがメインですが、イベントの最後では試飲もできます。
参加は無料。抽選で300名が招待されます。聞くところによると、今年は2倍以上の倍率だったそうです。
こちらが2019年のプログラム。これで無料とは贅沢です。
- 蛯原健介氏による基調講演(約30分)
- 山梨ワインを語るパネルディスカッション(約90分)
- GI Yamanashiワインテイスティング(約60分)
会場は、品川駅近くのグランドセントラルタワーにあるTHE GRAND HALL。撮影NGだったので、開始前に撮ったステージの写真でご勘弁を・・・。
以下、時系列で書きます。
1.主催者挨拶
東京国税局長による主催者挨拶で開会。「GI Yamanashiのブランド確立が課題」とおっしゃっていたのが印象に残りました。
2.基調講演(蛯原健介明治学院大学教授)
蛯原先生はワイン法の専門家で、2013年に地理的表示「山梨」が認定される前から、日本ワインの国際競争力獲得に向けて地理的表示の重要性を唱えていらっしゃった方です。
この日は「『地理的表示』ワインはここが違う」というテーマで、産地表示ワインとGIワインの違いや、GIの今後の展望をお話しくださいました。
以下、私の理解と興味の範囲でサマリます。
産地表示ワインとGIワインの違いとは?
ざっくりいうと、
- 産地表示ワイン → 地名が保証されたワイン
- GIワイン → 地名だけでなく、品質も保証されたワイン
例えば、ラベルに「山梨産」と表示している場合、「山梨県産ぶどうを85%以上使用し、山梨県内で製造されたワイン」ということがわかります。
一方、ラベルに「GI Yamanashi」と表示するには、産地の要件だけでなく、ぶどうの品種や糖度、製法等の要件をクリアし、官能審査(テイスティング審査)をパスする必要があります。また、ぶどうは100%山梨産でないとダメです。
つまり、GI Yamanashiと表示している場合、「一定の品質が保証された純山梨県産のワイン」ということがわかります。
GIワインのほうが付加価値が高いのです。
GIワインの今後の展望
今後の展望としては、
- 都道府県よりも狭い範囲でのGI(例:GI勝沼、GI余市)
- 「GI 日本ワイン」も可能?(GI 日本酒はすでに登録)
などが挙げられました。
要するに、国内でワインのGIを増やし、日本ワイン全体の品質の底上げしていくことが大事なのだと思います。
3.山梨ワインを語るパネルディスカッション
続いて、各方面の有識者8名によるパネルディスカッション。豪華な顔ぶれです。
内容としては、メルシャンの元工場長で現在活躍する若手醸造家たちに多大な影響を与えた故・麻井宇介氏とのエピソードトークやパネリストのワイナリー紹介など、盛りだくさんでした。
筆者にとって興味深かったのは、GIワインの海外展開に関する話題。
以下、簡単ですがサマります。
KOJのロンドンプロモーション
甲州ワインの海外における認知度向上を目的に活動する団体・KOJ(Koshu Of Japan)がワイン市場の中心地・ロンドンで毎年行っている試飲会では、招待客を厳しくスクリーニングし、著名なワインジャーナリストなど発信力の高い人たちに絞るのだそうです。戦略的ですね。
実は4年前に大学の卒論でKOJのことを少しだけ書いたのですが、当時より活動の幅が広がっているようです。ちなみに、パネリストで登壇されていたくらむぼんワイン・野沢社長は卒論の取材でご協力いただいたお一人です。
海外進出に有利なGIワイン
ラベルに産地を表示することはヨーロッパで勝負する上で必須条件ですが、EUに輸出するワインに産地を表示するには、EU法の基準に従って製造する必要がありました。
しかし、2月1日に発効した日欧EPAによって日本のGIがEUでも保護されるようになり、GI Yamanashiのワインはそのまま輸出できるようになりました。
パネリストの方々の感覚では、ここ数年で海外でも日本ワインの認知度が高まっているとのこと。
だからこそ、今後国際市場に展開していくために、GI Yamanashiワインを増やすことはもちろん、新たなGIの登録を目指すことも重要になってきます。
・・・と筆者は理解しました。
3.GI Yamanashiワインテイスティング
パネルディスカッションが終わると、参加者はワイングラスを受け取ってロビーに移動します。お待ちかねのテイスティングです。
山梨県の24ワイナリーが出展し、44種類のGI Yamanashiワインを飲み比べできます。
会場の様子。わかりにくいですが、壁沿いにワイナリーのブースが並んでいます。すごい人です。様子を伺うかぎりでは、すでに日本ワインの造詣が深い方が多い感じがしました。
ワインはすべてGI Yamanashiとあり、どれも洗練されて安定感があります。
しかし筆者が気になってしまったのは、ラベルの「GI Yamanashi」の文字サイズ。
そこで突然ですが、
GI Yamanashiを探せ!!
のコーナーをやりたいと思います。
まずは、くらむぼんワインさんのNシリーズ・マスカット・ベーリーA。
GI Yamanashi、どこでしょうか?
こたえ:一番下です。
次!
サントリーさんの登美の丘甲州2016。
こたえ:右下にひっそりと。
ラスト!
アルプスワインさんのJapanese Style Wine 甲州2017。
こたえ:左上にさりげなく。
そう。
文字が小さいのです!!!
上の3社さんはあくまで一例で、多くのワイナリーさんで小さなフォントが使われていました。
GI Yamanashiブランドをアピールするなら大きい文字のほうが目立ってよいはずなのに、なぜこんなに控えめなんでしょうか?
複数のワイナリーさんにお伺いしたところ、
デザイン上の都合
という回答が圧倒的多数。
そうですか・・・T T
ぜひ、各ワイナリーのラベルデザインを邪魔せずに主張できる共通のGI Yamanashiマークでも作ってもらいたいです。
そのほうが一般の消費者にも覚えやすいと思います。
まとめ
いかがでしたか?
GI Yamanashiワインを飲んでみたい!と思っていただけた方、ワインに力を入れている酒屋さんなら置いている可能性が高いので、ぜひ探してみてくださいね。
地理的表示「山梨」シンポジウムは例年この時期に開催しているので、気になった方は来年までお待ちください^ ^;
筆者にとっては2年ぶり、2度目の参加でしたが、GI Yamanashiは日本ワインを知るきっかけの1つだったこともあり、原点に帰ったような気分にもなります。
GI Hokkaidoについても過去記事で書いてますので、よかったらどうぞ。ちなみにまだ現物を見たことはありません・・・。
https://japanwinenomics.com/blog/gi-and-wine-industry-in-hokkaido
GI Yamanashiについてもっと知りたい!という方はこちらのサイトで。
ではではー
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