こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。
今回は、国税庁のサイトで公表されている「酒類製造業及び酒類卸売業の概況」の令和5年アンケート結果を、ワインに注目してサマリーしたいと思います。ちなみに、令和5年は調査を行った年で、データ自体は令和4(2022)年のものです。
「酒類製造業及び酒類卸売業の概況」とは、国税庁が年1回実施する酒類業者向けのアンケート調査結果を公表したもので、日本のワイン産業の動向を捉えることのできる数少ない統計資料の1つです。
このブログでは過去に「国内製造ワインの概況」として何度か紹介していますが、令和元年以降名称が変わり、清酒、ビール、ウイスキー、ワインのデータをまとめた形で公表されています。このため過去のサマリ記事とは多少構成が変わりますので、ご了承ください。
近年、日本ワインの注目度は上がっているように見えますが、果たして生産状況はどうなのか・・・?
確認してみましょう〜
はじめに:データに関する注意点
記事で紹介する日本ワインの生産量、出荷量、輸入量はあくまでアンケート調査の集計結果です。以下を念頭において読んでいただけると幸いです。
- アンケート未回答の業者の数値は反映されていない
- 毎年同じ業者が回答しているとは限らない
- (上記により)年度によって多少のブレがある
なお、令和5年アンケートの回答数は、調査対象436者中294者でした。
日本ワインの生産量・出荷量・輸出量の変化
図は、日本ワインの生産量・出荷量・輸出量について、調査が開始した2015年以降のデータをまとめたものです。*1
ここ数年の日本ワイン人気に反して、生産量、出荷量ともに減少傾向です。特に生産量は2015年に比べ約64%まで減少しています。輸出量は全体量が少ないものの、増加傾向といえます。
ちなみに、日本ワイン以外の国内製造ワインの生産量は32,971KLでした。2021年は90,089KLだったので、2022年は日本ワインに限らず国内のワイン生産量が全体的に落ち込んだようです。
※1 2021年以降の輸出量は、全体の合計値が不明のため、輸出金額上位10か国の輸出数量を反映している。
国内のワイナリー数の変化
全国のワイナリー数は468。前年度から15件増加しました。本ブログで最後に紹介した2018年(331件)に比べると、なんと4年間で137件も増加しています。
生産者が増えている一方で、生産量が伸び悩んでいることは興味深いです。
なお、表の「ワイナリー数」は、調査年度においてワインの生産または出荷の実績がある果実酒製造場の数で、免許を持っているだけのワイナリーは対象外です。「日本ワイン生産あり」は、そのうち日本ワインの生産量を回答したワイナリーの数です。2021年から減少したように見えますが、単に未回答の業者が多い可能性もあります。
都道府県別ランキング
続いて、都道府県別の日本ワイン生産量ベスト10を確認します。
順位 | 都道府県名 | 生産量(kl) | 前年比 | ワイナリー数 |
---|---|---|---|---|
1 | 山梨県 | 3,466 | -28.62% | 47 |
2 | 長野県 | 3,049 | -2.77% | 40 |
3 | 北海道 | 2,484 | -14.4% | 32 |
4 | 山形県 | 492 | -52.92% | 8 |
5 | 新潟県 | 479 | +17.69% | 6 |
6 | 岩手県 | 397 | -6.59% | 6 |
7 | 島根県 | 196 | -4.39% | 3 |
8 | 大阪府 | 167 | +36.89% | 2 |
9 | 宮崎県 | 137 | +1.48% | 1 |
10 | 栃木県 | 132 | -29.03% | 3 |
ベスト4は長年変動がなく、5位以降も概ねいつもの面々という感じです。昨年からの変化としては、5位の常連だった岩手県を新潟県が抜き、昨年7位の岡山県がベスト10から外れ(16位)、代わりに大阪府がベスト10入りしています。
なお「ワイナリー数」は、全ワイナリーではなく日本ワインを生産するワイナリーの数です。
ぶどう品種別ランキング
最後に、ぶどう品種別受入数量(=ワインの原料として受け入れられた国産生ぶどうの数量)のベスト10を白ワイン用と赤ワイン用に分けて確認します。
順位 | 白ワイン用品種 | 赤ワイン用品種 |
---|---|---|
1 | 甲州 | マスカット・ベーリーA |
2 | ナイアガラ | メルロー |
3 | シャルドネ | コンコード |
4 | デラウェア | キャンベルアーリー |
5 | ケルナー | ブラック・クイーン |
6 | ソーヴィニヨン・ブラン | カベルネ・ソーヴィニヨン |
7 | ミュラートゥルガウ | 巨峰 |
8 | ポートランド | ツヴァイゲルト |
9 | セイベル9110 | ヤマソービニオン |
10 | バッカス | ピノ・ノワール |
最後に記事を書いた2018年度に比べると、欧州系品種がさらに順位を上げている印象です。具体的には、白はシャルドネ、ミュラートゥルガウが順位を上げ、赤はメルローが長野の主力品種・コンコードを逆転しました。
数量の推移については、別の機会で整理したいと思います。
まとめ
いかがでしたか?
2022年度のトレンドをまとめると、
- 日本ワインの生産量・出荷量・輸出量はすべて前年比マイナス。ただし輸出量は増加傾向
- ワイナリー数は、前年比で15件増加(4年前と比べると137件増加!!)。だが、生産量は伸びていない
- 新潟県、大阪府が日本ワイン生産量で順位を上げた
- 欧州系品種が引き続きシェアを伸ばしている
といったところでしょうか。
世の中の日本ワインの盛り上がりに対して、数値はおとなしめという印象を持ちました。機会があれば、数字の要因・背景なども調べてみたいと思います。
過去の「国内製造ワインの概況」のまとめ記事はこちらからどうぞ!
ではではー
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