平成時代の国内ワイン市場を統計データで振り返ってみる

こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。

平成も残すところあとわずかとなりました。

平成最後の記事ということで、30年余りで日本のワイン市場がどう変わってきたのかについて、統計データを使って振り返ってみたいと思います!

国内のワイン生産量・消費量・出荷量の変化

下のグラフは、国税庁の酒税課税状況データを元に、平成元年から29年度の国内ワイン生産量、消費量、出荷量の変化を表したものです。吹き出しにポイントになりそうなイベントを入れています。なお、平成30年度のデータはまだ公表されていないので入っていません。

平成時代の国内ワイン生産量・消費量・出荷量

傾向として、

  • 消費量(赤い折れ線)輸入ワイン出荷量(ピンク棒)→ 大幅な増加
  • 生産量(青い折れ線)国産ワイン出荷量(青い棒) → 緩やかな増加

になるかと思います。

簡単にまとめると、平成時代の国内のワイン市場は、何度かのワインブームを経て輸入ワインの牽引により大きく拡大したということが言えます。

日本ワインを含む国内製造ワインは数量としては大きくありませんが、赤ワインブームの反動減の後、平成後半は増加基調にあったといってよいでしょう。

以降出てくる統計データはこのグラフの動きを反映しているものが多いので、頭の片隅に入れておいていただければと思います。

ワインブームについてはこちらの記事でどうぞー。

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こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。 日本国内におけるワインブームは、1972年の第1次に始ま...

酒類全体の消費量は減少

国内のワイン市場が拡大したことはわかりましたが、世間的には若者の酒離れなどよってアルコール市場は縮小していると言われていますよね。

下のグラフは、先ほどのグラフから「消費量」だけを抜き出し、アルコール全体の消費量と比べたものです。

平成時代の国内アルコール消費量とワイン消費量

桁違いなので2軸グラフにしていますが、確かに、赤のワイン消費量が増加した一方で、緑のアルコール全体の消費量は減少してます。

どのお酒が減ってしまったのか?

そこで、平成元年と平成29年の国内アルコール消費量をお酒の種類別にまとめてみました。

まずは平成元年。ビールが全体の7割以上を占めています。

国内アルコール消費量シェア(平成元年)

そして、直近の平成29年がこちら。全体の消費量は、平成元年に比べて2%ほど減っています。

国内アルコール消費量シェア(平成29年)

ビールは変わらずの1位ですが、40%以上もシェアを落としています。

大きく伸びたのが、リキュール発泡酒

ちなみに発泡酒は平成元年では「その他」にカウントしています。

リキュールは第3のビール缶チューハイを含みますので、発泡酒も含め、家飲み需要の影響が大きそうです。

ワインは3%ほどですが、シェアを増やしました。

平成のあいだで、消費者の嗜好が多様化されたことがわかるかと思います。

ワインの輸入量と輸出量の変化

次に貿易統計を使って、ワインの輸出入について見てみましょう。

平成時代のワイン輸入量と輸出量

輸入量は増加、輸出量は伸び悩み

輸入量は、はじめのグラフの「輸入ワイン出荷量」と似た動きになります。平成9年から10年にかけて大きく跳ね上がっているのは、赤ワインブームの影響です。平成後半の伸びは、EPAによるチリやオーストラリア産ワインの関税引下げも寄与していると思います。今年2月に発効した日欧EPAではEU産ワインの関税が撤廃されましたので、今後も海外からの輸入は増えていくことが予想されます。

一方、輸出量は伸び悩み気味です・・・。平成9年と13年に跳ねていますが、すみません、原因不明です。何にせよ、国内生産量が増えないことには、輸出量の増加は見込めないと思います。

EPAによる関税引下げについてはこちらの記事でー。

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全国のワイナリー数の変化

次に、ワイナリー数の変化を見てみましょう。グラフは、国税庁の統計年報から果実酒製造免許場数を集計したものです。

平成時代の全国ワイナリー数の変化

平成前半は220〜230件程度であまり変化がありませんが、平成20年度あたりから突然増加し始め、平成29年度までに100件近く増えています。

なぜ平成20年度以降に増えたのか?

グラフにも書いてますが、ワイン特区の影響が大きいと思います。

平成20(2008)年の構造改革特区法改正で、ワイン製造免許の取得に必要な製造数量を緩和する特例措置が追加され、特区の認定を受けた自治体を中心にワイナリーの新規参入が進んでいます。

要するに、一部の地域で少量生産でもワイナリーを始めやすくなったのです。

ですので、この10年でワイナリーは一気に増えましたが、はじめのグラフで見たように生産量の増え方が緩やかというのも頷けます。

ワイン特区についてはこちらの記事でどうぞー。

ワインで地域活性化!ワイン特区についてサマリーしてみる
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ワインの物価指数の変化

最後にさらっと、ワインの物価指数の変化を見てみましょう。

グラフは、2015年を100とした場合の各品目の物価指数を表したものです。

ワインの物価指数は国産輸入でそれぞれ公表されています(ただし輸入ワインは平成2年から)。参考までに、物やサービスすべての物価指数を表す総合と、お酒全体の物価指数も入れてみました。

平成時代のワイン物価指数

目立つのは、平成7年から8年にかけて国内製造ワインが15ポイントも下落している点でしょうか。が、原因はよくわかりません。輸入ワインは平成初期は大きく変動していますが、直近の10年間くらいは国内製造ワインと同じ水準で動いています。

時代背景として、平成9年に消費増が5%に引き上げられ、その後日本は長いデフレ時代に突入しています。

ワインの物価についてはリサーチ不足なので、そのうち改めて記事にできればと思います。

まとめ

いかがでしたか?

平成のあいだ、日本のワイン市場が大きく成長した様子が伝わりましたでしょうか。

平成は、ワインが私たちの生活にかなり浸透し、身近な存在になった時代と言えます。

国内のワイン生産量はまだまだ少ないですが、ここ数年で国産ぶどう100%で造られる「日本ワイン」の人気も高まっていますので、令和時代に市場がどのように変化していくのか、楽しみですね。

というか、記事をまとめているうちに平成が残り6時間を切ってました・・・時代が変わる前に更新できてよかったです。。。

令和もニホンワインノミクス!をよろしくお願いいたします!

ではではー

参考リンク

国税庁統計情報|国税庁

財務省貿易統計

統計局ホームページ/消費者物価指数(CPI) 時系列データ

Comment

  1. ミユさん
     非常に分かりやすいと思います。私は自動車メーカーに勤務しておりワインの門外漢ですが、もっと情報が得たくなりました。またデータが最新化されたら拝見したいと思います。グラフにそれぞれコメントが入っていてとても分かりやすいです。ありがとうございます。

    • 塩井成一さん
      コメントありがとうございます!とても励みになります。
      データはタイミングを見計らって最新化し、新たな記事にて紹介したいと思います!

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