こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。
昨年末、2018年12月30日に環太平洋パートナーシップ協定(TPP11)が発効し、締結国から輸入する様々なモノの関税が引き下げられました。ワインもその1つです。
輸入品の関税引き下げは、販売価格の値下げにつながり、私たち一般の消費者には嬉しいことです。
ワインの輸入関税についてはこのブログで何度か取り上げていますが、TPP11発効でどう変わったのか気になるところなので、今回は直近の状況を確認してみたいと思います。
ワインの輸入関税率(2019.1.14版)
まず基本知識として、世界164か国(2016.7.29現在)のWTO加盟国に適用されるワインの関税率は、
15%または125円/Lのうちいずれか低いほう
です。
750mlのボトルに換算すると、1本あたり最大93円になります。
これが、TPPやEPA(経済連携協定)といった貿易に関する協定を結んでいる国の場合、取り決め次第で引き下げられます。
表は、ワインの関税率が引き下げられている協定国の最新の税率です。
相手国 | 関税率 |
---|---|
メキシコ | 無税 |
チリ | 1.2%又は125.00円/lのうちいずれか低い税率 |
スイス | 無税 |
ペルー | 無税 |
オーストラリア | 5.6% |
モンゴル | 10.9%又は90.91円/lのうちいずれか低い税率 |
TPP11 | 10%又は125円/lのうちいずれか低い税率 |
新たに加わったTPP11は10%。
WTOルールの15%から一気に5%引き下げられました。今後も段階的に引き下げられ、8年後にゼロになります。
*1 財務省 実効関税率表(2019年1月14日版)HSコード「2204.21.020」の関税率を参照。
ワインの価格がどう変わるか、ざっくり計算してみる
輸入関税額は、CIF価格という輸入価格に関税率を掛けて求めます。
ワインの輸入価格といってもピンキリですが、安価なワインの方が関税引き下げの恩恵を受けやすいので、1本あたりの輸入価格を500円として関税を計算し、WTOルールと比べてみましょう。
WTO: 500 × 15% = 75円
TPP11: 500 × 10% = 50円
大雑把ですが、同じ輸入価格の場合、TPP11参加国産のワインのほうが25円安く買えることになります。
25円!!!
うーん。安いには安いんですけどね・・・。
絶妙におトク感を得られないので、税率1.2%のチリで計算してみましょう。
WTO:500 × 15% = 75円
チリ:500 × 1.2% = 6円
印象変わりますね^^
過去13年間のワイン関税率の変化
参考までに、チリとのEPA発効の翌年2008年以降の1月における協定国のワイン関税率(従価税のみ)をグラフにしてみました。
こうして見ると、TPP11は初回からかなり低い税率が設定されたことがわかります。
TPP11の現状
参加11か国のうち、国内手続きを終えている日本、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、メキシコの6か国が現時点での締結国となります。
上の表にも出てきたように、メキシコとオーストラリアとはすでに2国間のEPAを結んでいて、メキシカンワインは関税ゼロ、オージーワインは税率5.6%になっています。
すなわち、今回実質的に関税が引き下げられたのは、
- シンガポール
- ニュージーランド
- カナダ
の3カ国になります。
このうち、ニュージーランドとカナダはワイン産地として有名です。ただ日本での認知度は高くないと思うので、関税引き下げによって輸入量が増えれば、ブームがやってくるかもしれません。
また、11か国以外にもTPP11への参加を表明している国がありますので、今後も動向をチェックしたいと思います。いつか、アメリカの復活もありますかねー。
2月にはEU産ワインの関税がゼロに!
来たる2月1日、日欧EPAの発効によりEUから輸入するワインの関税が即時撤廃されます。
EUといえば、フランスやイタリア、スペインなど人気ワインの宝庫。ワイン業界的にはTPP11よりも日欧EPAのほうがインパクトが大きいと見え、アサヒ、サントリー、サッポロ、メルシャンといった国内酒類大手や小売大手のイオンがすでにEU産ワインの値下げを発表しています。
さらに、今年は上のグラフに出てきたチリワインの関税もゼロになる見込みです。
一方で、今年9月に消費税増税、2020年には酒税改正によるワイン増税が予定されています。多かれ少なかれ、関税引き下げの恩恵が薄らいでしまうのも事実です。
日本ワインには脅威?チャンス?
関税引き下げで、おいしくてリーズナブルな輸入ワインが増える・・・。
ワイン輸入関税の引き下げは日本ワイン市場にとって、
- 輸入ワインにシェアを奪われる →脅威
- ワインがもっと普及し、市場が拡大する →機会
という2つの側面があります。
過去記事でも書いていますが、私は脅威よりも市場拡大に期待しています。
まとめ
TPP11の発効によるワインの輸入関税の変化を確認してみました。
世間的には2月1日の日欧EPA発効によるワイン関税撤廃のほうが注目されていますが、筆者としてはTPP11のワインが入ってくるのも楽しみです。
日本ワインと輸入ワイン。一緒にワイン市場を盛り上げてくれたらいいなと思います。
ワインの輸入関税に関する過去記事は、こちらのカテゴリーからどうぞ。
ではまたー
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