こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。
今回のテーマは、ワイン特区。
新聞記事でたまに見かけるワードですが、ちゃんと調べたことがなかったので、調べてみました。
ワイン特区がうまく活用されることは、日本のワイン産業に少なからず良い影響をもたらします。
特区って何?という方もいらっしゃると思うので、今回はとりあえず、
- ワイン特区とは何なのか?
- 全国にどのくらいワイン特区があるのか?
について、ざっくりサマリーしたいと思います。
ワイン特区とは?
ワイン特区は、構造改革特区制度における酒税法の特例措置によって、果実酒製造業に参入しやすくなる区域のことを指します。
構造改革特区制度を簡単に言うと、
実情に合わなくなった規制を特定区域限定で緩和し、事業をやりやすくして地域を活性化しよう!
という国の制度です。
地方自治体が特例措置を活用した事業計画を作成・申請し、国が認定します。民間事業者が自治体に計画を提案することもできます。
国からすると、規制緩和を地域限定で試験運転するという意図もあり、うまくいけば全国展開されます。
2003年に構造改革特区の第1弾として認定を受けた山梨県のワイン産業振興特区の特例措置は、2005年に全国展開されました。それまでは農地法の規制によってワイナリーは農地を持つことができませんでしたが、この規制緩和で自らワインの原料となるぶどうを栽培できるようになりました。
ワイン特区が受けられる規制緩和とは?
では、なぜワイン特区では果実酒製造業に参入しやすくなるのでしょうか?
それは、果実酒製造免許の取得に必要な最低製造数量基準が緩和されるためです。
どういうことかと言うと、果実酒(以下ワイン)の製造免許を取得するには、酒税法の規定で年間6キロリットル以上の製造量を見込んでいる必要があるのですが、ワイン特区ではこの基準が2キロリットルに引き下げられるか、適用外になります。
「2キロリットル」か「適用外」かは、次のとおり、その特区が対象とする事業によって決まります。
特産酒類の製造事業 →2キロリットルに引き下げ
ワイナリーを開設したい!というケースです。最低製造数量基準が2キロリットルに引き下げられます。
6キロリットルを単純に750mlボトルに換算すると、6,000,000 ÷ 750 = 8,000本。家族経営などの小規模生産者にとってはハードルが高そうですよね。これが3分の1になるのは大きいです。
ただし、地域の特産品を原料とする必要がありますので、特区外からぶどうを仕入れて醸造する場合は対象になりません。
特定農業者による特定酒類の製造事業 →適用外
農家民宿などが自家栽培のぶどうでワインを造ってお客さんに提供するようなケースです。この場合、最低製造数量基準の適用外となり、生産量の心配をする必要がなくなります。
どちらか1つの事業だけで認定を受けている特区もあれば、両方の事業で認定を受けている特区もあります。
ちなみにこの特例措置は、2008年5月21日の構造改革特別区域法改正で追加されました。*1
*1 構造改革特別区域法の一部を改正する法律(平成20年法律第35号)
ワイン特区で期待できる経済効果
地域内にワイナリーが増えるということは、次のような経済効果が期待できます。
- 地域のブランド力が上がる →観光客が増える!
- 人手が必要になる →雇用が増える! →みんながお金を使う!!
- ぶどう農家の担い手が増える →農業活性化!
- 生産者間の交流で新しいアイデアが生まれる →地域のブランド力が・・・
まさに、当ブログのタイトルであるニホンワインノミクスが狙うところ。
もちろん、うまくいけばの話です。
ワイナリーと、それを支える地域や自治体にかかっているのです。
全国にどのくらいワイン特区があるのか?
構造改革特区のリストは内閣府のサイトで公開されています。次の2点に該当する特区を集計してみたところ、直近の第45回認定申請分までで、全国19道府県・37区域という結果でした。
- ぶどうを原料とするワインの製造事業を対象としている
- 上に書いた酒税法の特例措置を受けている
なお、ワイン特区は果実酒全般が対象ですが、この記事ではぶどうを原料とするワインに注目したいので、シードルやフルーツワインのみが対象と思われる特区は集計から除外しています。ご了承ください。
都道府県別に確認してみる
下の図は、都道府県別のワイン特区の件数を日本地図に表したものです。色が濃いほど件数が多く、カーソルを当てると詳細を確認できます。
最も多いのは7件の長野県、次いで北海道と有名なワイン産地が並びますが、意外なところでは中国地方や九州地方に多いのがわかるかと思います。なお、「備後ワイン・リキュール特区」は岡山県と広島県にまたがるので、両県にカウントしています。
ここ数年でワイン特区が急増
下のグラフは、特例措置が追加された2008年以降のワイン特区数の推移です。2014年以降は新規認定数が増え、全体の件数も大きく増加しています。
ワイン特区の増加が実際にワイナリーの増加に繋がっているのかについては、別の機会に確認したいと思います。
37のワイン特区の一覧
最後に、37区域の内訳をざっとご紹介します。
都道府県 | 認定自治体名 | 特区の名称 | 認定年 |
---|---|---|---|
北海道 | 名寄市 | 日本最北のワイナリー創生・名寄ワイン特区 | 2018 |
北海道 | ニセコ町 | ニセコ町ワイン特区 | 2014 |
北海道 | 仁木町 | NIKIワイン特区 | 2017 |
北海道 | 余市町 | 北のフルーツ王国よいちワイン特区 | 2011 |
青森県 | 八戸市 | 八戸ワイン産業創出特区 | 2016 |
岩手県 | 花巻市 | 花巻クラフトワイン・シードル特区 | 2016 |
山形県 | 上山市 | かみのやまワイン特区 | 2016 |
山形県 | 南陽市 | ぶどうの里なんようワイン特区 | 2016 |
福島県 | 二本松市 | 東和ワイン特区 | 2012 |
茨城県 | つくば市 | つくばワイン・フルーツ酒特区 | 2017 |
埼玉県 | 入間市 | 入間ワイン特区 | 2011 |
埼玉県 | 小川町 | 有機の里小川ワイン特区 | 2017 |
山梨県 | 韮崎市 | 武田の里にらさきワイン特区 | 2014 |
山梨県 | 北杜市 | 北杜市地域活性化ワイン特区 | 2008 |
長野県 | 上田市、小諸市、千曲市、東御市、立科町、青木村、長和町、坂城町 | 千曲川ワインバレー(東地区)特区 | 2015 |
長野県 | 伊那市 | 信州伊那ワイン・シードル特区 | 2018 |
長野県 | 大町市、安曇野市、池田町 | 北アルプス・安曇野ワインバレー特区 | 2018 |
長野県 | 塩尻市 | 桔梗ヶ原ワインバレー特区 | 2014 |
長野県 | 山形村 | 信州山形ワイン特区 | 2014 |
長野県 | 高山村 | 信州・高山ワイン特区 | 2011 |
長野県 | 飯綱町 | 飯綱ワイン・シードル特区 | 2018 |
三重県 | 名張市 | 名張市リカーチャレンジ特区 | 2015 |
鳥取県 | 鳥取市、八頭町 | とっとり・やず果実酒特区 | 2016 |
鳥取県 | 倉吉市、湯梨浜町、北栄町 | 倉吉・湯梨浜・北栄ワイン特区 | 2017 |
島根県 | 海士町 | 海士ワイン特区 | 2017 |
その他 | 笠岡市、井原市、三原市、尾道市、福山市、府中市、神石高原町 | 備後ワイン・リキュール特区 | 2016 |
岡山県 | 新見市 | 新見A級グルメワイン特区 | 2015 |
岡山県 | 吉備中央町 | 吉備中央でぇれーうめぇワイン特区 | 2016 |
広島県 | 福山市 | ふくやまワイン特区 | 2015 |
広島県 | 廿日市市 | はつかいちワイン特区 | 2017 |
山口県 | 周防大島町 | 周防大島ワイン特区 | 2018 |
福岡県 | 北九州市 | 台地が醸す夢のワイン特区 | 2018 |
熊本県 | 宇城市 | 宇城の地のもんでワイン・リキュール特区 | 2008 |
熊本県 | 天草市 | 天草宝島ワイン・リキュール特区 | 2009 |
大分県 | 宇佐市 | ツーリズムのまち宇佐・ハウスワイン特区 | 2008 |
宮崎県 | 小林市 | 名水のまち ワインづくり特区 | 2008 |
宮崎県 | 綾町 | 綾町特産酒類ワイン特区 | 2016 |
以上です!抜け漏れがあったらすみません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
規制緩和によって小さな事業者でもワイン製造に参入しやすくなり、地域活性化やワイン産業全体の発展に繋がっていくのであれば、すばらしいことです。
実際どうなのか?という点については、機会を改めて検証する予定です。
私たちにできることと言えば、ワイン特区のワインを飲んでみることでしょうか。
ではまたー
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