ワインと健康と社会的損失について考えてみる

こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。

先日、WHO(世界保健機関)から「飲酒による死者が年間300万人」という報告書が発表され、世界の酒類大手が警戒しているという日経新聞の記事を読みました。

お酒は楽しいものですが、健康被害などの問題と隣り合わせなのも事実です。

というわけで今回は、お酒と健康のジレンマについて、経済学的視点で考えてみたいと思います。

決してワイン業界にケンカを売ろうとしているのではありませんよー

WHOの報告書に世界の酒類大手が警戒

冒頭にあげた日経新聞の記事を一部引用します。

WHOが9月に発表した報告書によると、2016年に飲酒関連で死亡した人は世界中の死亡者のうち、5.3%を占めた。2.8%の糖尿病を上回る。報告書は多くの国で対策が必要と指摘。税金引き上げや広告の禁止や制限といった対策を講じるよう呼びかけた。

日本経済新聞 2018.11.22 朝刊 企業3

なんと!

たばこのような厳しい規制を避けたい世界の酒類大手では、すでにノンアルや低アルコール分野の強化が図られています。

実はWHOにおけるアルコールの有害使用に関する議論は、10年以上前から始まっています。2010年には「アルコールの有害な使用を減らすための世界戦略」という指針が採択され、各国に対策が委ねられました。

ただし、このときに引き合いに出された2004年の推計では、飲酒による死者は250万人、死亡者すべての3.8%となっていました。

つまり、数値だけをみると今回の推計で悪化してしまったわけです。

大手からすれば、

これはいよいよまずいことになってきた

となるでしょう。

日本のアルコール対策は?

日本はもちろんWHOの加盟国ですが、アルコール関連問題の対策に消極的と言われます。

なるほど、日本では多くの国で規制されている屋外での飲酒飲み放題などの文化が根付いていますし、近所のコンビニで深夜でもお酒を買えます。

私が以前住んでいたカナダでは、お酒は決まった酒販店で日中帯しか購入できませんでした。

といっても、日本が何もしていないわけではなく、WHOの指針をきっかけとして2013年に成立した「アルコール健康障害対策基本法」に基づき、国をあげて対策を推進しています。取り組み内容は、アルコール健康障害対策基本法推進ネットワークのサイト等を見る限りでは、啓発活動が中心になっているようです。

わかりやすい事例としては、お酒のCM「ゴクゴク」等の効果音や喉元アップの描写、25歳以下の登場人物を使用することが制限されました。

うーん。

どれほどの効果があるのかはわかりません。

近年、飲酒運転に対する罰則が厳しくなり、世間の意識も変わったのは間違いありません。しかし、飲酒にまつわるトラブルや悲しい事件・事故が未だなくならないのも事実です。

アルコールによる社会的損失

厚生労働省研究班の推計によると、2008年のデータに基づくアルコール関連問題の社会的損失は、4兆1483億円だそうです。

主な内訳は、

  • 医療費 ・・・1兆101億円
  • 死亡や治療による賃金喪失 ・・・3兆974億円
  • 自動車事故の物損額 ・・・225億円

2008年の酒税の総額1兆4680億円なので、税収では到底まかないきれないほどの損失が出ているわけです。

ちなみにたばこの社会的損失は5〜7兆円と言われます。もはや大差ないレベルです。

経済学の用語で、ある経済活動が第三者にマイナスの影響を与えてしまうことを外部不経済といいます。環境汚染などの公害が典型例です。

アルコールによる社会的損失も、外部不経済のひとつです。

多くの場合、外部不経済を解消(=内部化といいます)するためには政府が介入し、マイナス影響の原因に対して課税したり、規制を強化したりします。

アルコールの場合、酒税の増税販売制限飲酒できる場所の制限などが考えられます。

たばこと同じようなイメージでしょうかねー。

このままでは、啓発活動だけでは済まなくなるかもしれません。

お酒のジレンマ

と、嫌なことばかり書いてきましたが、お酒自体が悪いのではありません。

飲酒でリラックスしたり、人との交流を深めたりなど、お酒は私たちの生活を豊かにしてくれます。

賛否ありますが、適量であれば健康に良いとも言われます。ワインに関して言えば、「赤ワインのポリフェノールが心臓疾患リスクを減らす」という、いわゆるフレンチパラドックスが有名です。

また、このブログで何度も書いているように、日本ワインや日本酒をはじめとする国産酒類は、地域の特産品として産地に観光客を呼び寄せることができ、地域活性化のツールとしても期待されています。

お酒を飲む側や提供する側の意識・行動が今後を左右しそうです。

ワインの適度な飲酒量とは?

最後に、ワインの適度な飲酒量を確認しておきましょう。

基準量は国によって異なりますが、厚生労働省のガイドラインによると、

通常のアルコール代謝能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20g程度である。

飲酒のガイドライン|厚生労働省 e-ヘルスネット

飲酒のガイドライン|厚生労働省 e-ヘルスネット

だそうです。

純アルコールは、

お酒の量(ml) × アルコール濃度(度数/100) × アルコール比重(0.8)

という式で求められます。

下の表は、「純アルコール20g」がワインでどのくらいの量に相当するのかを、ワインの標準的なアルコール度数別に計算したものです。グラス1杯は120mlとしています。

アルコール度数適正量グラス換算
11%227ml1.9杯
12%208ml1.7杯
13%192ml1.6杯
14%178ml1.5杯

少なすぎる・・・T T

と思うのは、私だけでしょうか・・・。

もちろん個人差がありますので、ご自身で調整してくださいね!

まとめ

私たちの生活を豊かにしてくれるお酒。

お酒を社会の悪者にしないためには、供給側が社会的責任を果たすことも当然大事ですが、何より私たちお酒を楽しむ側一人一人の自覚が欠かせません。

かくいう筆者もしばしば飲み過ぎてしまうことがあるので、気をつけます・・・。

お酒を飲む機会が増える時期ですが、ほどほどに楽しみましょう!

ではではー

参考リンク

アル法ネット(アルコール健康障害対策基本法推進ネットワーク)

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