農林水産省の統計でぶどうの生産状況を確認してみる2:用途別編

こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。

農林水産省の統計まとめ記事の第2回です。

前回はぶどう全体のデータを中心に確認しましたが、今回は加工用に出荷するために栽培されたぶどうの用途別仕向量、つまり

何の用途でどのくらい出荷されたのか?

について、農林水産省「ぶどう用途別仕向実績調査」のデータを使って確認していきます。なお、執筆時点で2017年産のデータが最新となります。

第1回の記事はこちらからどうぞ。

加工用に栽培されたぶどうの用途別仕向量

第1回の記事で、国内のぶどう収穫量のうち約8割が生食用で、加工用は2割程度と書きました。

2017年に加工用に出荷するために栽培されたぶどうの収穫量は2万1467トン。下のグラフは、その用途別の内訳を表したものです(前回も掲載)。

約80%が醸造用=ワイン用?

ぶどうの果汁を醸造してできる製品にはワインビネガーなどもあるので、醸造用がすべてワインの原料というわけではありません。

しかしながら、国産ぶどうでワインビネガーが大量に生産されているとも思えないので、この80%はほとんどがワインの原料と考えてよいのではないかと思います。なお、ワインビネガーの生産量は確認できませんでした。

加工用ぶどうなのになぜ「生食向け」が?

少しややこしいのですが、グラフの「生食向け」は、加工用に出荷するために栽培したものの品質が良かったなどの理由で最終的に生食向けに出荷された分のことです。生食用の方が価格が高いこともあり、生食用品種で粒の形がよいものなどは食用に回されるのでしょう。

なお、前回記事で紹介した「生食用」は初めから食用として栽培されたものを指します。

果汁用に出荷されるのわずか2%

ジュースなど果汁向けの仕向量は、全体の2%程度の466トン。市販のぶどうジュースは多くが輸入果汁を原料としているので、ここにはカウントされません。ちなみに同年のぶどう果汁の輸入量約4万3000トンでした。*1

国産ぶどうを原料とするぶどうジュースは輸入果汁のジュースより価格が高いですが、プレミアム感がありますよね。多くのワイナリーでも造られています。

*1 農林水産省 農林水産物輸出入概況(2017年)より。

かすかに見えるグリーンのパイ=缶詰用

グラフでかろうじて目視できるグリーンのパイは、缶詰用の仕向量です。全体の0.2%、42トンです。

ぶどうの缶詰・・・私はピンとこないのですが、ゼリーやケーキなどのスイーツはもちろん、煮詰めてお肉料理のソースなどにも使われるそうです。ワインに合うかも??

通販サイトで検索した限りでは、中国産が多く出回っているようです。国産ぶどうの缶詰は若干値段が高い感じがしました。

過去10年の用途別仕向量の推移

上の円グラフと同じデータを、過去10年にわたって遡ったのが下のグラフです。

年によってばらつきはあるものの、10年間を通して生食向けの仕向量は減少し、その分醸造用の比率が増えています。

この10年間で国内のワイナリー数は100軒近く増加し、自社栽培の数量も増えていますので、醸造用の比率が増えていくのは自然な流れかなと思います。*2

*2 国税庁 果実酒製造業の概況より。

醸造用仕向量の都道府県別ベスト10

続いて、醸造用仕向量の上位10都道府県を確認します。参考として、生食用も含めたぶどう全体の出荷量の順位も入れています。

2017年産ぶどう醸造用仕向量 都道府県別ベスト10
順位 都道府県 醸造用仕向量(t) 全体出荷量順位*3
1 長野 6,773 2位
2 山梨 5,513 1位
3 北海道 1,393 6位
4 山形 1,054 3位
5 宮崎 446 18位
6 岩手 409 10位
7 島根 264 15位
8 新潟 238 17位
9 大分 204 13位
10 石川 203 24位

上位4道県は、日本ワイン生産量ベスト4道県でもあります。興味深い点として、ぶどう全体の出荷量では山梨県が1位ですが、醸造用ぶどうでは長野県が1000トン以上の差をつけて1位になっています。

長野県は山梨県に次ぐワイン産地ですが、食用のぶどうも多く生産する山梨県に対して、ワイン用ぶどうの生産に特化していることを示しているのかもしれません。

*3 農林水産省 果樹生産出荷統計(平成29年産)より。

醸造用仕向量の品種別内訳

最後に、醸造用に出荷されたぶどうの品種別の内訳を確認しておきましょう。

甲州、ナイアガラ、マスカットベーリーAと、日本ワインではお馴染みの品種で50%以上を占めます。メルロー、シャルドネといった欧州系品種も存在感を示しています。

まとめ

2回にわたってぶどうの統計をまとめてみました。

今回のポイントを挙げると、

  • 加工用に栽培されたぶどうの約8割が醸造用≒ワイン用に出荷される。
  • 生食向けに回される量は減少傾向にある。
  • 長野県は山梨県に比べてワイン用のぶどうに特化している?

といったところかなと思います。

農林水産省の統計データと向き合ったのは大学の卒論以来なのですが、言葉の定義が何ともややこしくて、記事を書くのにものすごく疲れました・・・。十分確認しながら執筆したつもりですが、万一おかしな点がありましたらご指摘いただけますと幸いです。

余裕ができたら他の統計にもチャレンジしてみようと思います。

ではまたー

参考リンク

農林水産省|特産果樹生産動態等調査

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