こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。
今回はOIVの統計データを取り上げます。
OIV(Organisation Internationale de la vigne et du vin:国際ブドウ・ワイン機構)はフランス・パリに本部を置く、ぶどう栽培やワイン生産に関する国際的な研究機関です。
公式サイトでは世界各国のワイン生産量や消費量などの統計データが公開されていて、世界のワイン市場を把握するのに便利かつ信頼度も高いです。
先日久しぶりにサイトをチェックしたらデータが更新されていたので、今回はこれを使って世界のワイン市場の動向と日本の位置づけをざっと確認してみたいと思います。
世界のワイン市場の動向を確認
まずは、世界のワイン生産量・消費量・輸入量について、1995年〜2016年の動きを確認してみましょう。参考までに、各大陸のデータも入れています。
ワイン生産量の推移
世界のワイン生産量は約20年のあいだ増えたり減ったりで、結果的に大きな変化はありません。ヨーロッパのグラフの動きが世界全体のグラフの動きに大きく影響を与えていることがわかります。大陸別にみると、ヨーロッパはやや減少、それ以外は横ばいです。
ワイン消費量の推移
消費量にも大きな変化はありませんが、強いて言えばゆるーく増加した感じでしょうか。大陸別には、ヨーロッパが減少し、アメリカ、アジアが増加しています。いずれも緩やかですが。
ワイン輸入量の推移
輸入量のグラフははっきりとした右肩上がりで、世界全体の輸入量は1995年と比べて約2倍に増えています。
特にヨーロッパ、アメリカ、アジアで伸びていることがわかりますが、うちアメリカとアジアは消費量の増加が影響していると考えられます。
一方ヨーロッパは消費量が減少しているので、別の要因があるのかと国別に確認してみたところ、イギリスの貢献が大きいようです。イギリスはワインの大消費国ですが生産量が少ないので、国内の需要を満たすには輸入に頼らざるを得ません。EU離脱後にどうなるのか気になるところですが、本題からそれるので別の機会に調べたいと思います。
なお、輸出量のデータもありますが、輸入量とほとんど同じ動きなので省略します。
上位10カ国と日本を比べてみる
次に、2016年のいくつかの指標について、世界の上位10カ国と日本を比較してみます。
なお、OIVのデータはヘクトリットル(hL=100L)単位ですが、以下では便宜上キロリットル(kL)に換算し、下2桁を切り捨てています。ご了承ください。
ワイン生産量(Wine Production)
順位 | 国名 | 生産量(kL) | シェア |
---|---|---|---|
1 | イタリア | 5,092,000 | 18.9% |
2 | フランス | 4,521,900 | 16.8% |
3 | スペイン | 3,967,000 | 14.7% |
4 | アメリカ | 2,371,500 | 8.8% |
5 | 中国 | 1,321,700 | 4.9% |
6 | オーストラリア | 1,310,000 | 4.9% |
7 | 南アフリカ | 1,053,100 | 3.9% |
8 | チリ | 1,014,300 | 3.8% |
9 | アルゼンチン | 944,700 | 3.5% |
10 | ドイツ | 901,300 | 3.4% |
25 | 日本 | 78,900 | 0.3% |
*数量の下2桁は切り捨て。
日本は69カ国中25位。トップ10とは桁違いですが、意外と上位?という印象です。
ワイン消費量(Wine Consumption)
順位 | 国名 | 消費量(kL) | シェア |
---|---|---|---|
1 | アメリカ | 3,168,400 | 13.0% |
2 | フランス | 2,711,400 | 11.1% |
3 | イタリア | 2,240,000 | 9.2% |
4 | ドイツ | 2,020,000 | 8.3% |
5 | 中国 | 1,916,200 | 7.8% |
6 | イギリス | 1,291,900 | 5.3% |
7 | ロシア | 1,045,700 | 4.3% |
8 | スペイン | 1,045,300 | 4.3% |
9 | アルゼンチン | 941,600 | 3.9% |
10 | オーストラリア | 538,000 | 2.2% |
15 | 日本 | 350,600 | 1.4% |
*数量の下2桁は切り捨て。
日本は192カ国中15位。数量はアメリカの10分の1くらいですが、1995年は172,600kLで24位だったので、22年で倍増しています。日本がワインの大量消費国として世界に認知される日も遠くないかもしれません。
1人当たりワイン消費量(Wine Consumption per Capita)
順位 | 国名 | 消費量(L) |
---|---|---|
1 | ルクセンブルク | 54.1 |
2 | ポルトガル | 52.5 |
3 | フランス | 51.2 |
4 | スロベニア | 45.8 |
5 | イタリア | 43.6 |
6 | セーシェル | 41.3 |
7 | スイス | 37.7 |
8 | クロアチア | 33.6 |
9 | ニューカレドニア | 32.5 |
10 | オーストリア | 32.4 |
69 | 日本 | 3.2 |
*数量の下2桁は切り捨て。
1人当たりの消費量になると、トップ10の面々がガラッと変わります。
日本は177カ国中69位。1人あたり年間3.2Lという結果です。
このブログをご覧になっている方の中には、
「そんなはずはない!!何ならルクセンブルク人より私のほうが飲んでる!!!」
と思う方もいらっしゃるでしょう。
あくまで平均ではこのくらいなんですね。
ワイン輸入量(Wine Imports)
順位 | 国名 | 輸入量(kL) | シェア |
---|---|---|---|
1 | ドイツ | 1,485,100 | 14.3% |
2 | イギリス | 1,355,500 | 13.0% |
3 | アメリカ | 1,114,300 | 10.7% |
4 | フランス | 775,000 | 7.4% |
5 | 中国 | 638,900 | 6.1% |
6 | カナダ | 415,700 | 4.0% |
7 | ロシア | 404,000 | 3.9% |
8 | オランダ | 395,500 | 3.8% |
9 | ベルギー | 312,000 | 3.0% |
10 | 日本 | 268,600 | 2.6% |
*数量の下2桁は切り捨て。
日本は192カ国中10位。トップ10入りです〜。
前述のアメリカやアジアと同じく、消費量の増加が輸入量に影響していると考えられます。日本は国内生産量が少ないので、なおさら輸入に頼ることになります。
ちなみに先ほど取り上げたイギリスは世界2位です。
ワイン輸出量(Wine Exports)
順位 | 国名 | 輸出量(kL) | シェア |
---|---|---|---|
1 | スペイン | 2,262,600 | 21.8% |
2 | イタリア | 2,063,600 | 19.9% |
3 | フランス | 1,407,200 | 13.6% |
4 | チリ | 907,600 | 8.7% |
5 | オーストラリア | 728,000 | 7.0% |
6 | 南アフリカ | 428,300 | 4.1% |
7 | アメリカ | 379,000 | 3.7% |
8 | ドイツ | 360,900 | 3.5% |
9 | ポルトガル | 277,800 | 2.7% |
10 | アルゼンチン | 259,800 | 2.5% |
75 | 日本 | 200 | 0.002% |
*数量の下2桁は切り捨て。
日本でもおなじみのワイン産地が上位に並びます。日本は150カ国中75位で、数量もかなり少ないです。
日本ワインの輸出については別の機会に書きたいと思いますが、当面は低い水準が続くと思います。
オマケ:日本と市場規模が似ている国
最後に、2016年の生産量と消費量について、日本と順位が近い国をさらっと紹介します。
生産量
- 24位:セルビア(87,500kL)
- 25位:日本(78,900kL)
- 26位:北マケドニア(78,500kL)
消費量
- 14位:ルーマニア(381,800kL)
- 15位:日本(350,600kL)
- 16位:オランダ(341,600kL)
1人あたり消費量
- 68位:ウクライナ(3.3L)
- 69位:日本(3.2L)
- 70位:バヌアツ共和国(3.1L)
まとめ
いかがでしたか?
直近22年間のトレンドとしては、
- 世界全体の生産量や消費量はあまり変わらない
- 輸入量(輸出量)が増えている
- アメリカとアジアのワイン市場が成長
- ヨーロッパのワイン市場は停滞気味
といった感じでしょうか。
今回はひたすらデータをまとめただけで分析などは行っていませんが、機会があればもう一歩踏み込んだ考察なども記事にできればと思います。
この記事で使用したデータはすべてOIVのサイトで公開されているので、興味のある方はチェックしてみてください。残念ながら日本語対応していませんが、トップページで「Data」→「Country Profile」または「Database」を選択すると国や大陸別、年別にデータを確認できます。CSVやPDFでダウンロードも可能です。
他にもワインの統計のサマリー記事を書いていますので、よかったらどうぞ。
ではまたー
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