こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。
先日財務省が発表した貿易統計で、20年4ヶ月ぶりに韓国へのビールの輸出額がゼロになったというショッキングな報道がありました。日韓関係の悪化による、日本製品の不買運動の影響とみられています。
韓国は日本にとってビールの最大輸出先。日本のビール各社へのインパクトは相当なものと思います。
ビール以外にも、ユニクロ製品や自動車の不買運動についてはよくテレビでも報じられていますが、他の日本製品も影響を受けているはず。
当ブログとしては、酒類への影響が気になるところです。
というわけで、今回はビールの対韓国輸出の動向をおさえつつ、ワイン、清酒、ウイスキー、焼酎、リキュールの輸出数量の変化についても確認してみたいと思います。
はじめに:不買運動はいつから?
韓国における日本製品の不買運動は、今年の7月1日に日本が半導体材料などの韓国への輸出規制を発表したことをきっかけに始まりました。
よって、不買運動の影響は7月度以降の貿易統計で確認できるものと思われます。
韓国向けビール輸出量の推移
図は、今年に入ってからの日本から韓国へのビール輸出数量と、前年同月比を表したものです。
1月と2月に前年を下回ったものの、3月〜7月は前年を上回る水準で輸出されていました。これが不買運動が始まった翌月の8月に激減し、9月はほぼゼロ、10月は完全にゼロになってしまいました。
韓国は日本からのビール輸出シェア1位
下の図は、2018年のビール輸出数量の国別シェアを表したものです。韓国が70%近くを占めています。
財務省の統計によると、2018年の韓国へのビール輸出数量は約8万KL。金額にすると約79億円です。
一方、今年1月から10月までの輸出額の累計は、約4.9万KL。このままゼロが続くと、昨年の6割程度に減ってしまうことになります。
韓国へ輸出をしている日本のビール各社の業績への影響が心配なところです。
韓国ビール市場への影響は?
キリンの調査*1によれば、2018年の韓国の年間ビール消費量は世界15位の約228万KL(日本は世界7位で約511万KL)。
このうち8万KLが日本からの輸入分だったと考えると、市場への影響は限定的ではないかと思います。
とはいえ、日本産ビールで商売をする現地業者にとっては大きな打撃です。中央日報日本語版12月4日の記事によると、アサヒビールの現地流通会社では人員削減に入ったそうです。
*1 キリンホールディングス株式会社 「キリンビール大学」レポート 2017年 世界主要国のビール消費量より
ワインの輸出には影響がでているのか?
ワインにおいても、韓国は主要な輸出先です。ただ、過去記事でも何度か書いているのですが、日本のワイン輸出量はそもそも少ないので、数字にするとビールに見劣りします。2018年の韓国への輸出数量は約12KL。金額で約800万円でした。この少なさでも国別シェア3位です。
不買運動以降の韓国向けワイン輸出量に変化は?
下の図は、ビールと同じように、2019年の月別輸出量と前年同月比をワインについて表したものです。
なんとまあ、傾向のつかみづらいグラフ・・・。
1月、4月、5月がゼロですが、不買運動は7月以降に始まったので、その影響ではありません。ちなみに2018年も1月、4月、5月の輸出はゼロです。
では7月以降に減っているのかといえば、グラフを見ると確かに6月をピークに減少しています。
しかし、2018年の8月、9月の輸出数量もゼロであり、不買運動の影響で減ったとも言い切れません。ワインは特定の月に取引があるのかもしれません。そして、ビールの輸出がゼロになった10月は前年比150%とむしろ増加しています。
これらから察するに、ワインは不買運動の影響を受けていないようです。日本ワインは韓国であまり認知されていないとも考えられます。
おまけ:韓国のワイン市場の規模
韓国でどのくらいワインが飲まれているのか知らなかったので、ワイン消費量などを日本と比較してみました。参考までにご紹介します。
韓国 | 日本 | |
---|---|---|
消費量 | 約4.1万KL | 約35万KL |
1人当たり消費量 | 約0.9L | 約3.2L |
生産量 | データなし | 約7.9万KL |
輸入量 | 約3.8万KL | 約26.9万KL |
日本に比べるとだいぶ市場規模が小さいようです。
清酒、ウイスキー、焼酎、リキュールの輸出量も確認してみる
まず、それぞれどのくらい韓国に輸出されているのかを確認してみましょう。表は2018年の実績です。
品目 | 輸出数量(KL) | 輸出金額(百万円) |
---|---|---|
ビール | 79,890 | 7,879 |
ワイン | 12 | 8 |
清酒 | 5,351 | 2,212 |
ウイスキー | 193 | 129 |
リキュール | 1,201 | 177 |
焼酎 | 176 | 85 |
ビールが圧倒的に多いことがわかります。
次に、ビールやワインの時と同じように2019年の月別輸出量と前年同月比をグラフにしてみました。さらっとご紹介します。
清酒 →10月ほぼゼロに。不買運動の影響あり?
海外への総輸出数量は年々増加している清酒ですが、韓国向けの輸出数量は3月以降は毎月前年を下回り、全体的に右下がりのグラフになっています。
8月と9月に大きく落ち込み、10月は約1KLとほとんどゼロに近い輸出量になっています。不買運動が始まる前から減っていたものの、8月以降の激減ぶりは不買運動の影響とも考えられます。
ウイスキー →8月以降前年同月比でマイナス。影響あり?
ウイスキーの輸出数量は、1月〜5月は前年を上回る水準ですが、6月に突然ゼロ近くまで減っています。7月と8月は盛り返しているように見えますが、8月以降は前年を下回っています。時期的には不買運動の影響と言えなくもありません。
焼酎 →8月は大幅増。傾向つかめず。
焼酎のグラフもワインと同じように増えたり減ったりと不規則的なグラフです。不買運動の真っ只中にあった8月に前年比300%(=3倍)に増え、その後は落ち込んでいます。
リキュール →8月以降ほぼゼロ。不買運動の影響?
2019年のリキュールの輸出数量は、5月と7月を除くと前年を下回っています。8月以降はグラフが底をつきそうなほど激減しているので、不買運動の影響と考えられなくもない感じでしょうか。
酒類の輸出データについてはこちらの記事でまとめていますので、よかったらどうぞ。
まとめ
いかがでしたか?
ビール以外のお酒にも不買運動の影響と思わしき数字の変化はみられるものの、元々の輸出数量が少ないため大きな問題にはならないのかもしれません。
何にせよ、外来品の不買運動っていずれ自国の雇用や経済にも悪影響がでてしまうので、賢い選択と思いません。早く収束することを願います。
ではではー
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