日本ワインの輸出について考えてみる1:データ編

こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。

日本ワインの輸出について、何度かに分けて書きたいと思います。

「日本から海外へのワインの輸出」と言ったところで、ピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。

それもそのはず。

前回記事で触れましたが、日本のワイン輸出量は世界150カ国中75位約200KLで決して多いと言えません。

しかしながら、日欧EPAなどの貿易協定や国際ワインコンクールでの受賞など、日本ワインの海外進出を取り巻く環境は近年めまぐるしく変化しており、これから輸出が伸びていく可能性はあります。

ワインの輸出については過去記事でもちょこちょこと書いているのですが、輸出だけに注目した記事はないので、この辺で一度まとめておきたいと思います。

第1弾はデータ編ということで、統計データを使って日本のワイン輸出動向を確認します。

日本ワインの輸出量は?

国税庁の「国内製造ワインの概況」で、2015年度以降の日本ワインの輸出量が確認できます。

  • 2015年度 … 45KL
  • 2016年度 … 56KL
  • 2017年度 … 58KL

あれ?さっき200KLと言ってなかったっけ??

そうなんです。

この数字は、国産ブドウ100%を原料とする「日本ワイン」の輸出量のため、輸入原料も含むワイン全体の輸出量に比べると当然少なくなります。また、製造業者への調査を元にしているため、未回答業者の数字は反映されていません。

数字だけ見ると増えているかのようですが、実際と異なる場合があるのであくまで参考として紹介しておきます。

輸出入の情報は、貿易統計を見るのが一般的

財務省が毎月公表している貿易統計のデータは、税関の申告を元に作成されるため、より正確で速報性も高いです。この記事でも以下、貿易統計のデータを使います。

ただし、貿易統計では品目の分類にHSコードという国際基準の番号を使用しているため、日本ワインの輸出量をピンポイントで確認することはできません。

この記事では、HSコード「2204 ぶどう酒(強化ぶどう酒を含むものとし、生鮮のぶどうから製造したものに限る。)及びぶどう搾汁」に分類されるデータを集計しています。なお、ぶどう搾汁にぶどうジュースは含まれません。

要するに、輸入原料で造られたワインも数字に含まれている可能性がありますので、ご理解の上読んでいただけると幸いです。

過去15年間のワインの輸出量と輸出金額

では早速、貿易統計のデータを使って過去15年間のワイン輸出数量と輸出金額の変化を見てみましょう。

2003年から2018年のワイン輸出数量と輸出金額の推移

ブルーが数量、オレンジが金額です。

輸入数量は2003年以降減少傾向が続き、2012年に底をついた後は200KL台で横ばいになっています。

輸出金額も傾向が掴みづらいですが、2017年の金額が跳ね上がっているのが目立ちます。理由はわかりませんが、この年は香港とインドネシアへの輸出金額が突出しています。数量が変わらず金額だけ増えるということは、単価の高いワインが多く輸出されたということになります。

酒類の輸出自体は増えている

ワインの輸出は伸び悩んでいますが、酒類全体の輸出規模は拡大しています。下の図は、主要なお酒の過去15年間の輸出数量をまとめたものです。ビールが牽引していますが、近年は日本酒ウイスキーの増加も注目されています。ワインも一応赤の棒グラフで入れてみましたが、年によってかろうじて目視できるレベルです。

2003年から2018年の主要な酒類の輸出数量の推移

なぜワインの輸出が伸びないのか?については、次回以降に書きたいと思います。

過去記事で日本酒やウイスキーとワインを輸出について比較していますので、よかったらどうぞー

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どの国に輸出してるのか?

次に、2018年のワイン輸出相手国ベスト10について、数量別・金額別に確認してみます。参考までに、2017年の順位も付けました。

数量別・輸出相手国ベスト10

2018年ワイン輸出相手国ベスト10(数量)
順位 数量(L) 前年順位
1 台湾 164,944 1(→)
2 中国 13,481 3(↑)
3 韓国 12,473 5(↑)
4 香港 9,505 4(→)
5 シンガポール 7,217 9(↑)
6 イギリス 4,159 6(→)
7 オーストラリア 3,020 10(↑)
8 マカオ 2,228 18(↑)
9 フランス 1,576 7(↓)
10 スウェーデン 1,512 12(↑)

アジアの国々が上位にランクインしています。

特に台湾への輸出量は例年桁違いで、輸出量全体の約半分を占めます。

金額別・輸出相手国ベスト10

2018年ワイン輸出相手国ベスト10(金額)
順位 金額(千円) 前年順位
1 香港 103,633 1(→)
2 台湾 85,748 3(↑)
3 中国 26,325 4(↑)
4 シンガポール 18,294 5(↑)
5 韓国 7,992 9(↑)
6 マカオ 6,782 17(↑)
7 イギリス 5,443 6(↓)
8 フランス 3,934 7(↓)
9 オーストラリア 3,664 8(↓)
10 アメリカ 2,149 13(↑)

金額になると、香港が1位に躍り出ます。数量に対して金額が大きい傾向は、香港や欧米諸国にみられます。上にも書きましたが、高額なワインが輸出されていることが考えられます。

香港はアジアのワインマーケットの中心地で、アジア最大級のワインコンクールも開催されます。値段は高いけど品質も高い日本ワインが受け入れられているということでしょうか。

ただ、各国への1L当たりの輸出金額を「金額÷数量」で単純計算してみたところ、香港は1L当たり約1万円という凄まじい金額になりました(台湾は1L当たり約500円)。データが間違っているのではないかと疑ってしまうほどですが・・・。何かご存知の方がいらっしゃればぜひ教えてください。

日欧EPA・TPP11発効の影響は?

最後に、昨年12月に発効したTPP11と、今年2月に発効した日欧EPAがワインの輸出に変化をもたらしているのかについて、確認しておきましょう。

青い実線が2019年1月〜6月、赤い点線は前年同月の輸出数量です。

2018年と2019年の月別ワイン輸出数量

うーん・・・。むしろ減っている感じですね・・・。

TPP11や日欧EPAの発効以降、協定国からのワイン輸入量は増加していると言われますが、今のところ輸出への影響はないようです。

まとめ

いかがでしたか?

日本から海外へのワインの輸出量がまだまだ少ないという状況が伝わりましたでしょうか。

今回はひたすらデータをまとめてみましたが、第2弾以降では、輸出が少ない背景や、輸出拡大への取り組みなどについても掘り下げていきたいと思います。

ではではー

参考リンク

財務省 貿易統計

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