こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。
国内のワイン産業において、原料不足は長きにわたる課題になっています。
日本ワインの原料は言うまでもなく国産ぶどうですが、国内で生産されるぶどうの多くは食用として出荷され、ワイン造りに使用されるのはごくわずかです。
実際の状況を確認すべく、農林水産省の統計データを調べてみましたので、2回に分けて紹介したいと思います。
第1回は、統計データについて簡単に説明した上で、
- ぶどうの結果樹面積や収穫量の変化
- 収穫量トップ10の都道府県
- どのくらいが加工用として栽培されるのか?
などを確認します。
はじめに:使用する統計データについて
本記事で使用するのは、次の2種類の統計データです。
- 果樹生産出荷統計(作物統計)
- ぶどう用途別仕向実績調査
果樹生産出荷統計 ・・・ぶどう全体の情報
主要産地におけるぶどうの結果樹面積、収穫量、出荷量などのデータを確認できます。
ぶどう用途別仕向実績調査 ・・・加工用に栽培されたぶどうの情報
主要産地で加工用に出荷するために栽培したぶどうの栽培面積、収穫量、用途別仕向量などを確認できます。結果の公表が遅く、今回使用する2017年生産分が現時点での最新データです。また、各都道府県内で50アール以上栽培されて出荷された品種のみが対象になります。
数値が整合しない点に注意
どちらも農林水産省が実施する調査ですが、担当部局や調査手法、精度が異なるため、数値が整合しません。また、生産量の少ない都道府県は調査対象外である点にも注意が必要です。しかしながら、概要を把握するには十分だと思うのでこの2つの統計データを使います。
各調査について詳しく知りたい方は、記事下の参考リンクをご覧ください。
ぶどうの結果樹面積・収穫量の推移
まずは、過去10年間のぶどうの結果樹面積と収穫量の変化を確認してみましょう。
結果樹面積(青い線)は、栽培面積のうち生産者が果実を収穫するために結実させた面積です。10年を通して緩やかに減少しています。収穫量(赤い線)は2012年に増加したものの、それ以降は減少傾向です。
ちなみに2019年の結果樹面積は16,600ha。東京ドーム3532個分です。
・・・といってもピンとこないですよね。
他の主要なフルーツと比べてみる
参考までに、主要なフルーツの結果樹面積と収穫量を一覧にしてみました。
品目 | 結果樹面積(ha) | 収穫量(t) |
---|---|---|
みかん | 38,700 | 746,700 |
りんご | 36,000 | 701,600 |
ぶどう | 16,600 | 172,700 |
日本なし | 11,100 | 209,700 |
もも | 9,540 | 107,900 |
なお、詳しくは触れませんが、ぶどう以外の果樹についても結果樹面積や収穫量はここ数十年で減少傾向にあります。
ぶどう収穫量の多い都道府県は?
2019年におけるぶどう収穫量の上位10道府県を表にしました。
順位 | 都道府県 | 収穫量(t) |
---|---|---|
1 | 山梨 | 36,900 |
2 | 長野 | 31,700 |
3 | 山形 | 16,400 |
4 | 岡山 | 15,800 |
5 | 福岡 | 7,640 |
6 | 北海道 | 6,900 |
7 | 青森 | 4,630 |
8 | 大阪 | 4,540 |
9 | 愛知 | 4,110 |
10 | 岩手 | 3,510 |
山梨県、長野県、山形県、北海道など、ワイン産地としてもおなじみの地域が多く含まれています。「ぶどう産地=ワイン産地」という構図が成り立っているようです。福岡や愛知はワインのイメージがありませんが、ぶどうはたくさん獲れるようです。
さて、ここまではぶどう全体に関するデータを見てきましたが、次からはこのうち加工用に出荷するために栽培されたぶどうに注目します。
収穫量の生食用・加工用構成比(推計)
グラフは、2017年生産分のぶどう収穫量について、生食用に出荷するために栽培されたぶどうと、加工用に出荷するために栽培されたぶどうの構成比を推計したものです。*1
加工用に栽培されたぶどうの収穫量は全体の約12%。過去もだいたい同じ比率です。あくまで推計になりますが、国内で収穫されるぶどうの9割程度が食用として栽培されていると言えます。
*1 「果樹生産出荷統計」のぶどう全体の収穫量から「ぶどう用途別仕向実績調査の」加工用収穫量をマイナスして生食用の収穫量を算出し、比率を求めました。
加工用のうちどのくらいがワインに使われるのか?
下のグラフは、加工用に栽培されたぶどうの用途別仕向量、すなわち「何の用途のために出荷されたのか?」を表したものです。醸造用=ワイン用と考えると、加工用ぶどうのうち8割弱がワインに使われているようです。
用途別仕向量のデータは、第2回で詳しく確認します。
加工用ぶどうの栽培面積・収穫量の推移
最後に、加工用に栽培されたぶどうの過去10年間の栽培面積と収穫量を確認しておきます。
はじめに見たように、ぶどう全体では減少傾向でしたが、加工用は増えたり減ったりで傾向がつかめません。
まとめ
いかがでしたか?
第1回のポイントとしては、
- ぶどうの生産規模は減少傾向にあるが、加工用についてはばらつきあり。
- ワイン産地として有名な県では、ぶどうの生産量も多い。
- 加工用に栽培されるのは、全体の1割程度。
- そのうちワイン用は8割程度。
といったことが挙げられるかと思います。
次回は、加工用に栽培されたぶどうについてさらに掘り下げてみる予定です。
ではまたー
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