日本のワイン輸入関税をサマリーしてみる

こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。

米トランプ政権が保護主義を強める中、去る2018年3月8日(チリ現地時間)、米国を除く11カ国による環太平洋パートナーシップ協定、いわゆるTPP11の署名式が行われました。

TPP11が発効すると、ワインを含む参加国からの輸入品の関税が引き下げられ、私たちにとっては安く購入できるようになります。

ワインの輸入関税の動向は国内のワイン市場に影響をもたらしますので、日本ワインにも無関係ではありません。

というわけで、今回は日本におけるワインの輸入関税についてサマリーしてみたいと思います。

関税とは?

まずは関税がよくわからない方向けに簡単に説明します。必要のない方はこの章は読み飛ばしてください。

関税とは、海外からの輸入品に課される税金のことです。

主な目的は、国内産業の保護

安い輸入品が入ってくることは消費者にとっては嬉しいですが、生産者にとってはお客さんを奪われることになりますので、経営に深刻な打撃を受ける場合もあります。

このため、国としては自国の産業を守るために「うちの国に物を売るならお金を払ってね」ということで税金を課すわけです。ついでに国の税収も増えます。ただし関税を負担するのは輸入する側です。

関税の金額は、その商品の販売価格に上乗せされますので、関税が引き下げられるとその分商品の価格が下がります。

関税の税率は国によって異なり、その国にとって重要な産業の品目ほど税率が高い傾向があります。

日本でいうとコメ。なんと1kgあたり402円という関税がかけられています。

過剰な保護的政策は、短期的にはその産業を守りますが、守られている分競争力が高まらず、長期的には産業の衰退につながるおそれもあります。

何となくイメージできましたでしょうか?

日本におけるワインの輸入関税

税率

基本税率では「輸入価格の21.3%または156.80円/Lのうち低いほう」とされていますが、通常はWTO協定税率の「輸入価格の15%か125円/Lのうち低いほう」が適用されます。ボトル1本(750ml)に換算すると、最大93円です。

自由貿易協定(FTA)などの協定を結んでいる国の場合、取り決めによって関税率を上記より引き下げたり、撤廃します。

表は、日本と協定を結ぶ主要ワイン生産国に対するワインの輸入関税についてまとめたものです(ただし現時点でEUとのEPAは未署名)。

税率は2018年4月1日版の実行関税率表(HSコード2204.21.020)を参照しました。簡素化するために従価税のみ記載しています。

相手国・地域協定発効時期税率(2018.4.1)撤廃までの期間
チリ2007年9月1.2%12年(2019年
オーストラリア2015年1月5.6%7年(2021年)
TPP112019年目標15%8年(2026年?)
EU2019年目標15%即時(2019年?

太字の箇所については後ほど。ポイントは2019年です。

税関ホームページ 実行関税率表(2018年4月1日版)より。

TPP11の影響は?

現在、TPP11の参加国からワインをどのくらい輸入しているのでしょうか?

表は、2017年の日本のワイン輸入相手国のうち上位10か国を表したものです。

順位国名輸入数量(L)
チリ55,519,092
フランス45,523,059
イタリア33,590,356
スペイン19,760,559
オーストラリア7,143,776
アメリカ合衆国6,875,905
ドイツ2,594,049
南アフリカ共和国2,277,085
アルゼンチン2,084,051
10ニュージーランド1,200,696

この中でTPP11の参加国は、太字のチリ、オーストラリア、ニュージーランド。

チリオーストラリアは、上の表にもあるようにすでに個別にEPAを締結しています。現時点でワインの関税率が下がっているので、TPP11でさらに安くなることはありません。というわけで、TPP11の発効に伴っては、ニュージーランドのワインが注目されるのではないかと思います。

また数量は少ないですが 、TPP11参加国のカナダ(48,239L)、メキシコ(38,835L)、ペルー(4,824L)、ベトナム(4,702L)からもワインを輸入しています。今後これらの国のワインを見ることが増えるかもしれませんね。

2019年、国内ワイン市場が動く?

1つめの表で太字にしていた2019年の文字。

2019年に何が起こるのでしょうか?

まずチリ。2007年の発効から12年間で関税を撤廃することになっているので、2019年で関税がゼロになります。

次にTPP11。予定どおり2019年に発効すれば、上にあげた国のワインの税率が多少は下がると思われます。

そしてEU。日欧EPAは未署名の段階ですが、早ければ2019年に発効し、ワインの関税は即時撤廃されます。上の表にもでてくるフランスイタリアスペインといった主要国のワインが一斉に値下がりします。

このように、2019年には多くの国から入ってくるワインの価格が下がる見込みのため、国内市場において日本ワインは各国のワインとの競争にさらされることになります。

過去記事でも書いたように、日本ワインの販売量減少を懸念する声も一部あるようですが、私はあまり心配していません。

競争にさらされるということは、競争力をつけるために成長が促されるということです。

また、輸入ワインの値下げでワインがより身近になって国内のワイン市場が拡大すれば、日本ワイン産業にとってもプラスに働くはずです。

まとめ

今回はワインの輸入関税について調べてみました。2019年以降、国内のワイン市場はますます盛り上がりそうですね。

個人的な事情ですが、以前カナダに住んでいたことがあり、よく現地のワインを飲んでいたので、カナダワインが日本でもっと飲めるようになったら嬉しいです^ ^(決して日本ワインに対する裏切りではありません!)

経済連携協定が日本ワインにもたらす影響については、こちらの記事でも書いていますので、よかったらご覧ください!

日欧EPAが日本ワインにもたらす影響って?
こんにちは!ミユ(@miyuwinomics)です。 今回のテーマは、日欧EPAです。 EU産のワインやチーズ...

ではまたー

*2018.12.4追記:TPP11は、2018年12月30日の発効が決定しました。

*2018.12.28追記:日欧EPAは、2019年2月1日の発効が決定しました。

参考リンク

経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)|外務省

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